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MUSIC LIFE 79年臨時増刊

日本のファンの根強い支持には驚いているんだ

★イギリスの音がアメリカに与えるものは大きいよ

――ジョン、あなたはメンバーの中で一番おとなしいという印象ですが…。

ジョン:そうだろうね。特にステージじゃ、その方が演奏しやすいんだ。誰でもそうじゃない?

――2人目のベビーが誕生したそうですね?

ジョン:(嬉しそうに…)うん、2人とも男の子で、上がロバート、下がマイケルっていうんだ。
    ☆実はこの当時すでにヴェロニカはローラを身ごもっている。

――あなたは、いつもニコニコしていてハッピーな印象ですね?

ジョン:(ニコニコと…)うん、笑うってことは自分の気持ちまでハッピーになると思うんだ。いやなことがあっても、いいことを考えて笑うように心がけているんだ。シリアスに悩むよりいいよ。
    ☆彼の笑顔の持つ「深さ」が垣間見られる発言。

――クイーンのメンバーとしての成功を手に入れた今、あなたが欲しいものは?

ジョン:家に帰って、ゆっくりとくつろげる時間が欲しいね。去年はズッと働きづめだったんだ。4人のメンバーが、ズッと一緒にいるというのはハードなことなんだ。もう、お互いに6〜7年一緒だからね。他のバンドにも同じことがいえるだろうね。

――去年、ニューオーリンズのコンサートで、あなたのヘア・スタイルを見ておどろいたんですが、一体どうしたんですか?(笑)

ジョン:う〜ん(笑)始めは少し短くしたんだけど、もうロング・ヘアには飽きたんだ。それに短いと手入れが簡単だろう?(笑)今、イギリスじゃロング・ヘアはあまりファッショナブルじゃないんだ。(☆自分はファッショナブルだと言いたいようだ)イギリスが変わっているのかもしれないけど、ロング・ヘアは今や”ジャパン”位のものさ(笑)ジャパンは日本で人気があるんだってね。音楽は、まあまあだけど、イメージは強烈だね。

――あなたは、最近作曲にも意欲的ですね?

ジョン:うん、あまり多くは書かないけれどね。他のメンバーと受けた音楽の影響が違うから、感じが違うんじゃないかなァ。

――そうですね、とてもポップで、メロディックだと思いますが、どんな音楽を聴いて育ったんですか?

ジョン:11〜12才の頃は、ラジオの”トップ20”なんかを聞いていたね。クリフ・リチャード&シャドウズなんか…それと、クリームやロリー・ギャラガーのブルース、他にはソウル・シンガーもかなり聴いたな。勿論ビートルズには、かなり影響を受けたと思うよ。

――アメリカのファンキー・ミュージックが好きだったそうですが、今、アメリカじゃディスコ・タイプのものが主流みたいですね?

ジョン:そうかもしれない。でも、例えばヴァン・ヘイレンなんかは、かなりイギリスのグループに刺激されて出て来たんじゃないかと思うよ。

――現在のイギリスのニュー・ウェイヴはどうですか?ストラングラーズや、グラハム・パーカーは、日本でもかなり人気がありますけど…。

ジョン:日本でも、そういうバンドが受け入れられるのはいいことだよ。僕はエルヴィス・コステロがベストだと思うな。彼の曲は、全部すごいよ。きっとアメリカでも成功するだろうな。イギリスのミュージシャンが、アメリカに強烈なインパクトを与えるのは素晴らしいことさ。彼の歌詞は、とても政治的なものが含まれているけど、それが受け入れられたんだからね。彼は、まだ若いみたいだけど、それは問題じゃないさ。
    ☆当時、コステロのアルバムでは「My Aim Is True」、シングルでは「Alison」が好きだと言っていた彼だが、89年にはその名も「Veronica」なんていう曲も出て来たせいで、オールタイムのお気に入りミュージシャンのようである。
★3年間のブランクで、この人気…信じられないよ

――例えば、グラハム・パーカーが最新アルバムの中で”ディスカバリング・ジャパン”という曲を歌っているんですが、その曲の中で彼は日本がアメリカナイズされすぎているといっていますが、あなたはどう思いますか?

ジョン:僕はそうは思わないよ。日本の文化は西欧のものとは異質のものさ。4年前に初めて来た時も、そして今回もそう思うよ。他の色々な国を見た結果そう思う。

――3年ぶりの来日ですが、ミュージック・ライフの人気投票で、ベーシストのNo.1に選ばれているんですよ。

ジョン:えっ?チープ・トリックのトム・ピーターソンじゃないの?

――最終結果では、あなたが1位でしたよ。

ジョン:本当!Thank you very much!(いかにもうれしそう)それにしても、僕達はまだ日本で人気があるんだね。驚いているんだ。だって、もう3年も日本には来ていないんだよ。

――ええ、でもグループ部門では4年連続1位ですよ。

ジョン:すごく嬉しいよ。初めて来日した時は、ディープ・パープルとかレッド・ツェッペリンが人気があった頃だものね。

――このごろ、クイーンのファンも少しずつ変わってきましたね?

ジョン:そうなんだ。以前よりもファンの平均年令が3才位上になったんじゃないかな?ファンもそれだけ成長したんだよ。それにしても3年もの間、人気を保っていられたというのが、おどろくべきことだよ。
3年という月日で、すべてが変わるからね。それに色々なバンドが来日しているし、今、東京だけでも、ボブ・ウェルチ、ジャーニー、ボストン、ボブ・マーレイとこんなに大勢来日しているんだ。3年前はこんなじゃなかったよ。それだけのコンサートの中から、クイーンを選んでくれたなんて、本当にうれしいよ。


――日本では、クイーンを目標にするアマチュアのバンドも出てきましたが、彼らに何かアドバイスはありませんか?

ジョン:レコードをたくさん聞くこと。そして、自分との違いを見つけることさ。でも最初はコピーも又、大切さ。僕も最初はレコードからコピーして、ベースを弾いていたからね。

――今、何本ぐらいベースを持っていますか?

ジョン:4〜5本かな。ステージ用には2本用意してあるんだ。"39"の曲に取り替えるからね。一番好きなのは、フェンダーのプレシジョンだよ。この前アメリカでこのプレシジョンのオールド・モデルを見つけたんだ。50年位前のもので、ピックアップも全然ちがうんだよ。今度のレコーディングで使ってみようかと思っているんだ。(☆使ったのだろうか?)日本製のベースは、まだ試していないよ。

家族の話をする時のジョンの表情は、実に優しい。普段でも温和な印象が、更に温和になる。メンバーの中で、一番若いにもかかわらず、確実に自分の世界を持っている人だ。クイーンの4人は、何事も4人全員の意見を尊重するそうだが、案外このジョンの意見は重要視されているらしい。ミュージシャンとしての力量もさることながら、いわゆる一般的な常識も兼ね備えた人でビジネスに対する冷静な目も持っているらしい。

先の音楽専科と比べるとずいぶん柔らかい印象を受けるインタビューではあるが、言いたいことは余さず言っているようだ。笑顔に関する発言が光っている。
(余談)東郷かおる子さんの本によると、この時MLのスタッフはジョンにインタビューするのをすっかり忘れていたらしい。3人が済んで片付けかけたその時、ジョンがにこにこしながら部屋に入って来たのでどうしようかと思ったそうである。(ひどい話だ、気持ちは分かるが)。質問も何も考えていないまま行ったのが、このインタビューなんだそうだ。


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