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Off The Record

with Mary Turner 1986 (Radio Interview)

フレディ・マーキュリー(以下FM): まさに巡り合わせだよ。僕達は様々な要素を持ち合わせていて、それが結合してうまく機能しているみたいなんだ…でもそれは、エゴを持ち合わせていない、という意味ではないよ。僕達はみんな凄まじいエゴの持ち主だから、解散の話もしょっちゅう出るし、険悪な雰囲気になることもよくある。しょっちゅう誰かが言ってるよ、「もう終わりにしたい」なんてね。でも、物事っていつでもうまくいくとは限らないでしょ。一緒にいられる妙薬とか、そういうものはないんだけど…はっきりこれだと言えないものだね。

それが何なのかは問題ではないでしょう。クイーンはまさしく「何か」を長い間育んできたのですから。そうでなければ14年間も一緒にいられませんよね。おそらくそれが「一種の魔法」なのかも。見つけ出す方法はただひとつ。私メアリー・ターナーが、これからの時間をフレディ・マーキュリー、ロジャー・テイラー、ブライアン・メイそしてジョン・ディーコンにお話を伺います。クイーン、「オフ・ザ・レコード」です。

[Don’t Stop Me Now]

メアリー・ターナー(以下MT): この14年間で、バンド内の関係は変化したとお思いですか? あなたは以前と比べると格段に作曲数が多くなっていますよね。

ロジャー・テイラー(以下RT): ああ、個人的にはどんどんハッピーになっていってるよ。今ではクリエイティブなことに対する発言権も十分あって色々言えるし…それまではほんと、ドラムと付け足しのヴォーカル・パートだけに制限されてる感じだったから。

MT: ロジャー・テイラーさんです。

RT: そうだね、関係は変化してきたよ、ずっと民主的になってきたと思う。最初なんか、フレディとブライアンだけが真のライターみたいでさ…でも今じゃ、皆が平等。

[Pain is So Close to Pleasure]

MT: スタジオ内でのあなた方は、どんな感じですか?

ジョン・ディーコン(以下JD): うーん、色々あるよ。もちろん。

MT: 喧嘩のようなことが、沢山?

JT: うん、幾つかね。ただ、僕達にとって幸いなのは、言い合った後でも翌日か翌々日にはちゃんと顔を合わせて、何か他のことを喋ったりしてやり過ごすことが出来ることなんだ。生意気だけど、僕達は今や円熟期に入ろうとしていて、少なくとも自分達が、当初の望み通りの成功を収めたバンドだっていう自信は持っていると僕は思う。時々、バンドの一員でいたいって思う理由はそこなんだよね。成功したいもの。で、僕たちはうまくやり遂げた訳だけれど、これからはもっと大変になってきそうだな。まだ僕たちには幾つか野望があるから…僕個人の望みもね。つまり…世界中にはまだ、僕達が行きたくても行けなかった国がかなりあるんだ。極東だと、日本ではやったけれど、他の国、例えば香港、シンガポール、インドネシア、マレーシア、中国なんかでは一度もプレイしていない。まだずいぶん先の話だし、他にもいろいろあるんだけど…あと、僕達はアメリカに戻りたいと思ってはいるんだよ。ちゃんと戻って、もう一度地盤固めをしたいな。

MT: 『ワン・ビジョン』の最初の方で、逆回転しているような音が聴こえるんですが…あれは何ですか?

RT: 実際は逆回転って訳じゃないんだが、まあ、近いかな。ざっと言うと、ハモって、速度を落とし、ちょっとしたワザを使ってテープに録ったものさ。

MT: 何か秘密のメッセージでも?

RT: いいや、あれはただ…1行かそこらでさ…悪魔崇拝の呪文だなんて言ってる連中もいるけど、まあ、世の中には治療が必要な奴もいるってことで…あれは、『God works in mysterious ways』って言ってるんだ。

[One Vision]

MT: お聞きしたいんですが、ステージに上がる前、何かご自身で儀式のようなものをなさいますか? 何か、気合を入れるようなことを?

RT: うん、スコッチをふた口。それでOK。ふた口以上でも、以下でもダメさ。

MT: それでうまくいくわけですか?

RT: ああ、まさしく適度にアグレッシブ、適度にシャープになれる。それ以上だと、ちょっとばかり調子が落ちてしまうんだ。

MT: ステージを降りたとき、真っ先にどうします?

RT: ぶっ倒れる。それが最初かな。誰かに靴と靴下を脱がせてもらうほど気持ちのいいことはないね。最高だよ。大抵、真っ先にこうさ。皆自分の椅子に座り込んで、靴と靴下を脱がせてもらうって訳(笑)

面白いですよね。さて、しばらくお待ち下さい。後ほどまたロンドンのウェンブリー・スタジアムの立見席に向かいましょう。演奏はクイーンだけ。メアリー・ターナーです。

[コマーシャル]

世界中でどれほど成功していても、故郷でのヒットを望むもの。ロンドンのウェンブリー・スタジアムであっという間にソールド・アウトを記録したクイーンは、ハッピーで、ほっとして、ナーバスでもありました。

MT: 2日間のウェンブリーを完売したのはスプリングスティーンとストーンズ以来ですよね。とても嬉しいことだと思ってらっしゃるでしょう。

RT: グレイトだね。…皆の反応に、心底びっくりしているよ。プロモーターのハーヴェイ・ゴールドスミスもほんとに驚いちゃってる。文字通り、あっという間に完売したわけだからね。応募は50万通なんて、信じられるかい? ほんとに驚きだよ。

MT: ここホームでプレイするというのは、何か違った感じがするものでしょうか?

RT: ああ、何かしら不必要なストレスを感じるもんだよ…お袋が来てたり…知り合いが多すぎたり…そういったことを抜きにして良い様に考えればご機嫌なんだけどね…それでもプレイするのが好きなんだって風に…。ウィーンでなら楽しめそうだけどさ(笑)ウェンブリーは特別だ。英国民にとってあそこは国民的スタジアムで、それなりの大きさがある。ショウはほとんどやらない場所だしさ。それで多分ちょっとばかりナーヴァスになっちまうんだろうな。

MT: 昨夜のコンサートはロイヤル・チャリティの一種だったんですか?

RT: ええっと、実は王室はあんまり関係ないんだが、そんなもんかな。アン王女が深く関わっている、「セイヴ・ザ・チルドレン」という世界中の恵まれない子供たちを対象にした活動があるんだ。チャリティに何かした方が良いと思ってね、ショウを一つやろうかと…。他の連中はプリンス・トラストで色々やってるみたいだけどね…多分、後でナイトの称号か何か貰うんだろうよ…「サー」・フィル・コリンズ、「ロード」・エルトンとか…クラプトン「伯爵」とかさ…ヤなもんだ。でも俺達は「ノー・ノー・ノー。純粋にチャリティの気持ちでやろう」って決めたんだ。

MT: ですが、どういうものなんですか? そういった人達に会います? 英国人なら特に、王室の方々と会うなんて普通では考えられないことだと思うんですが。

RT: うーん、彼等はタダの人じゃないでしょ、ってこと?

MT: ええ、だから…

RT: 君は正しいと思うよ…実際は俺も、去年チャールズとダイアナに会った時はものすごく緊張したから…うん、まさにガチガチだった。皆一列に並んでさ、俺はデヴィッド・ボウイの隣りだったんだけど、2人ともすごくナーヴァスになってて、彼なんか俺のマルボロをほとんど1箱吸っちまったんだ。それから最後まできちっと整列したまま待って…カメラマンもいて…かなりドキドキものだったよ、ああ…ほんと、訳わかんなかったさ。

MT: 彼女は綺麗でしたか?

RT: (躊躇いがちに)ああ…つまり、女のコだから、ねえ(笑)

[Killer Queen]

MT: 若いイングリッシュ・ボーイズとしてですね、王室に突然紹介されて握手されるのはどんな気持ちです?

ブライアン・メイ(以下BM) (笑)思っていた以上に素晴らしかったな。王室のことに特に関心がある訳ではないけれど、チャールズとダイアナが持っているカリスマ性というかオーラというか、何て呼んだら良いか分からないけど、それはものすごいもので驚いた。楽しんで彼等に会うことが出来たよ。とても素敵で、チャーミングで、純粋な好奇心を持った人々だった。不実なところはまったく無いんだ。何が起きているのかに興味を持って、僕が期待していた以上に、僕たちのことも理解してくれていた。素敵だったよ。良い気分になれた。まるで…そうだな、まるで子供のときに両親に「いい子ね」と言われて頭を撫でられたような気分だった…ある意味不合理なことなんだけれども、そう感じずにはいられなかった。「わあ、僕は何か役に立つことをしたんだな」って風にね(笑)

MT: それに加えて、チャールズとダイアナが私たちと同世代だからかもしれないと私は思うんです。彼は未来の王様なんですけどね。それにしても、ロック・コンサートのバック・ステージで彼と親しくするなんてすごいことですよ!

BM: うん、不思議な気持ちだね。僕はずっとチャールズに敬意を表してきたし、実のところ彼がとても好きなんだ。彼は思っていることを躊躇せずに口に出せる人だ。容易じゃないよ。英国の王や女王はもう権力を有している訳ではないし、プレジデントになるのとはまた別だ。でも彼等には膨大な規制があって、その上で良い外交をしなくてはならない。でもチャールズは、言われたとおりに話をするのがたまらなく嫌みたいで、言いにくいこともどんどん口に出してきたよね。僕はそういうところを尊敬しているんだ。時が来れば偉大な王様になってくれると思うな。

MT: ライヴ・エイドやアムネスティなど、慈善事業や、もしくはロックへの関心が高まっているようですが、どのあたりからそうなったとお考えですか? 10年前なら、「黙っとけ」なんていう風潮だったと思うのですが。

BM: 最近は少しづつ現実的になってきたように思う。60年代だと、皆が愛と平和について沢山語り合ってはいたものの、具体的にどうしていいのか分からなかったから。この前、ジョーン・バエズが言ってたっけ…ジョーン・バエズだったかな? ちょっと待って…違う、グレース・スリックだ…「ウッドストックと比べて、ライヴ・エイドはどうでしたか?」と聞かれて、彼女はまったく違うと答えていた。ウッドストックはまったくの時間の浪費だった、なぜなら皆自分達だけで熱狂してたから、でもライヴ・エイドは視点が外に向いていた…本当に助けを必要としている人々に影響を与えたと。嬉しかったよ。そして思った。ロックもちょっとづつ成長して、色々と役に立つことが出来るようになってきたんだなあって…

[Somebody to Love]

「カインド・オブ・マジック」はこの2年で初のアルバムです。いいえ、レコーディングに2年かかったというわけではありません。彼等はそれぞれ、ソロ・アルバムや映画のサントラ、教則ビデオなどの個人プロジェクトで忙しかったのです。教則ビデオですよ? 音楽の先生、ブライアン・メイをお迎えする準備は出来てますか? さて、ノートを開いて下さい。これからはギターの授業をしますよ。「オフ・ザ・レコード」です。

私メアリー・ターナーが、クイーンのブライアン・メイとジョン・ディーコンにお話を伺います。「オフ・ザ・レコード」です。


[Tear it Up]

MT: あなたは過去に、外部でもレコーディングを行ってきましたが、市販用ギターもデザインしたとか…

BM: うん、ギルド・ギターは僕が長年使ってきたもののコピーでね…僕のは20年前に父と作ったものなんだけど…彼等もとても良い仕事をしてくれたよ。ただ、ちょっとばかり高値なので、僕はちょっとがっかりしているんだ。いまの値段じゃ、本当に欲しい人達が買えなくて、エリートだけのものになってしまう。そんなつもりはないんだ。だから将来は、もっと安いバージョンを作りたいと思っているよ。

MT: それは、あなたのギターの完全なコピーなんですか?

BM: うん、ものすごく近いもので、音も限りなく近いよ。

MT: それで、ビデオも作ったんですって?

BM: ああ、スターリックス・ビデオという…他人のプレイを真似て弾いてみたい人達向けの教則ビデオがあってね。良いことだと思うよ。それに皆うまいプレイヤーばかりでね…僕だってギターを習いたてのころスターリックスのエリック・クラプトンのビデオが欲しかったよ…素晴らしいことだったろうに、残念だ…すごく良いものだと思うから、より多くの人達に見てもらいたいね。僕ならジョージ・ハリスンとエリック・クラプトンのを見たいな。紙面よりビデオの方がそりゃもうずっと語りかけてくるものも多いしね。指がどう動けばどんな音が出るのか目の当たりに出来るわけだから…見事なものだよ、本当に。

[Keep Yourself Alive]

[Another One Bites the Dust]

MT: バンドの中でソロ・アルバムを出していないのは、あなただけですよね。

JD: うん、だって歌えないもの。

MT: (笑)

MT: 本当に?

JD: そう。かなり下手なんだよ。歌のレッスン受けとけば良かった。

MT: あなたのキャリアにおいて、ネックのようなものですか? そうしておけばよかったと思ってます?

JD: 勿論さ。ひどすぎるもの。ある意味、車椅子で生活しているようなものさ。思い通りに自分を表現しきれないんだから。歌えたら最高だろうなって思うよ。ただのハンディなんてもんじゃない、ものすごいハンディなんだよ、曲を書く時のね。歌いたいよ。けれどダメなんだ。

MT: いつ曲を書いたりデモを作ったりするんですか?

JD: う〜ん…ほとんどフレディと一緒に作業をしてきたんだ、キャリアの大部分をね。彼はとても素晴らしいよ。僕が何かアイデアを思いつくと、すぐにそれをより良いものにしてくれるんだから。そのおかげで今まで、どんなシンガーとも仕事をしたことがないんだ、ほんとに。

[Bo Rhap]

あなた方は2500万枚のアルバムを売り、ベスト・ニュー・アーティスト賞からアメリカのフェイヴァリット・グループ賞に至るまで、数知れない賞を受けてきましたね。ラジオ局があるあらゆる国、中にはそうでない国でまでナンバー・ワン・ヒットを飛ばして。この後、何が残っているのでしょう? 今後も勝負を続けるクイーンの挑戦について伺いましょう。「オフ・ザ・レコード」です。

[コマーシャル]

[Radio Ga Ga]

MT: あなたの人生において、音楽は今でも最も重要なものですか? そんな時期はもう通り過ぎたのかしら?

RT: 時々、成長しなくちゃなと思うよ。もう抜け出そうって。だけどまた、音楽が一番だと思ってしまっている。時々嫌になることはあるな。ロードに出ている時はそうは思わないが、スタジオにいる時にね。ちょうど…「もう音楽なんて聴きたくないぜ!」ってな風に。そういうとき車の中で一番聞きたくないのは、音楽を流すラジオだな。勿論、ちょっと大げさだけど。

MT: フレディ、あなた達は長い間サクセス・ロードを歩んできましたね。ゴールド・アルバム、海外ツアー、それらはすべて、バンドを始めたばかりのキッズたちの夢です。で、これからどうするつもりですか? まだ挑戦したいことがあるんでしょうか?

FM: サバイバル・テストなんだよね。勿論、「OK、もう十分やってきたよ」と言って身を引いて、幸せに暮らす手もあるけれど、それは僕達の求めていることじゃない…。僕達は、音楽を作るためにここにいるんだ。出来る限りね。つまり僕にとっては、それが一番興味深いことなんだもの。曲を書いているときには気づかないけれど、実際に世に出て評価され、良い曲だねと言われると、素晴らしい気持ちになるよ。

[We are the Champions]

MT: 批評家たちから酷評されても、へっちゃらですか。

FM: もう慣れっこになっちゃったみたいだよ…ここ数年、そういう目に遭ってきたわけだし、当たり前みたいになってる。実際のところ、僕はまったく気にしてないさ…プレスに煩わされたりなんかしない。…昔はね、色々思ってたから、出かけていって新聞を買って確かめたりしたものだけど。今はまったく違う。僕達の音楽なんだもの。基本的に、人々が僕達の作品を買ってくれるのかどうかってことだけが気になっているよ…それが僕たちの原動力だろうね。


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