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Queen -- On The Road Again

from "International Musician and Recording World" Nov. 1982

International Musician Nov.1982

プラチナ5枚、ゴールド4枚のアルバム実績をはじき出すといった商業面での成功により、クイーンは70年代、80年代初期の不朽のグループの一つに数え上げられている。いつも良い批評を受けてきたとはいえないものの、この英国のロック・グループは、すこぶる斬新なヒット・バンドとして何度となくチャートに名を残してきた。クイーンの音楽はこれまで、ヘヴィー・メタル、ロック、ディスコ、ファンク、R&B、ソウル、ポップ、そしてロカビリーにカテゴライズされてきた。そして12枚目のアルバム「ホット・スペース」(エレクトラ)では、それまで敬遠してきたシンセサイザーの使用を解禁した。さらに新しいサウンドを求め、このLPではメロディ、リズム、ベースにシンセサイザーを用いることで、クイーンは大いに力量を発揮している。

クイーンはかつての特徴だった重厚な音楽から軌道を逸らし、より希薄で、(タイトルにもなっているように)「スペース」のある、明らかにR&Bの影響が濃いリズミックなサウンドを選択した。しかしながらこのアルバムでも、ブライアン・メイのユニークで芸術的なギター・スタイル、ジョン・ディーコンのシンプルを極めたベース・プレイ、ロジャー・テイラーのパワフルなドラミング、そしてフレディ・マーキュリーの独特のテナー・ボーカルがうまく融合し、それ故にクイーンの典型的スタイルを保っている。特にキーボード・ベースに代表されるシンセサイザーの追加によって、スタジオで各自がギターを担当したりといった風に、各メンバーが他の楽器に着手するようになった。マーキュリーとメイが幾つかの曲でベース・パートを引き受ける一方、ディーコンはリズム・ギターなどの責務も担っている。

彼らはこのアルバムの大半をドイツのミュンヘンで、残りはスイスのモントルーにある私設スタジオでレコーディングした。モントルーではデヴィッド・ボウイが加わり、『アンダー・プレッシャー』を共同プロデュースした他、『クール・キャット』のバッキング・トラックに手を(声を)貸している。

ツアーに際し、初の補助キーボーディスト、フレッド・マンデルを雇い入れて新作のサウンドを再生することで、マーキュリーの風変わりなステージングが更に広がることとなった。しかしキーボードを担当することで動きが制限されてしまうにも関わらず、彼は今回も何曲かの大ヒット・ナンバーではキーボードを弾くようだ。壮観なライト・ショウと相まって、クイーンはヨーロッパや南北アメリカで大規模なコンサートを生み出し続けている。

IM&RWは、「ホット・スペース」の1982年プロモ・ツアーのオープニング・コンサート当日のモントリオールで、クイーンのメンバーに質問をぶつけてみた。

IM&RW: ツアーに戻るのはどんな気分ですか?

BM: 素晴らしいね。北アメリカに戻ってこられてとても良い気分だよ。文明的なツアーにね! 他の土地が非文明的だという意味ではないのだけれど、アメリカではあらゆることが準備されているから。僕達は実質的に最初の最初から全てやらなくてはならないような場所をツアーしてきたんでね。南アメリカやメキシコの人々はあまりロック・ショウに慣れていないようなんだ。だから何もかもこちらで設定しなければならないんだよ、トイレからステージに至るまで。ここアメリカは整備されているから、とても快適だ。

JD: 実際はそんなに長い間ツアーに出ていなかったわけじゃないんだよ。5〜6週間ほどヨーロッパで、イギリスでも何日かやってきたから。

IM&RW: 貴方達はパフォーマーとしてライヴを楽しんでいるようですね。もう経済的な理由でコンサート・ツアーやレコーディングを続ける必要はないはずですが、それでもまだファンの前に出かけていくんですね。イギリスのハイド・パークでは自分たちのコストでコンサートを開いていましたっけ。何故ですか?

FM: やっててすごく楽しいからさ。もしそうじゃなかったらとっくにやめてるよ。お金の問題なんかじゃない。ある意味で、ファンに恩を感じてるんだ。こんなに成功して、にわかに「ああ、沢山金儲けしたよオレ達」って言えるようになったんだから…ありがとうを言わなくちゃ。それがボクに出来る最良のことだ。

BM: 僕達はもうこれ以上銀行の預金残高を増やそうなんて考えていない。未だに続けているのは…もっと有名になりたいからだと僕は思う。若いうちから、いつだって何らかの動機があったよ。分かってもらいたい、高く評価されたい、というようなね。人々を興奮させたいんだ。僕たちがツアーに出る主な理由は、この部分にある。見に来てくれた人々が最高に満たされて帰る様子を感じたいんだ。

RT: 挑戦、だな。グレイトなことさ。ミック・ジャガーを見てみなって。今のとこ、世界のトップに違いないよな。めっちゃくちゃ、伝説だよ。彼は皆に、一点の曇りもなく証明してのけたんだ、ローリング・ストーンズが世界最高だって。彼らは自分らのしてきたことを誇りに思ってるだろうよ。いまでも楽しめるんだからな。

IM&RW: 長年に渡ってサウンドがどのように変化してきたのか、説明してもらえますか?

BM: 最初は、ハーモニーを伴ったヘヴィー・グループの一種としてスタートしたと思う。僕はいつもそう呼んでいるんだ。僕達はいつでも、やってみたいことはなんでも試してみることにしている。どのアルバムでも、異なるサウンドが拮抗しているよ。最初の何枚かを作った後は、バラード系やアコースティックな曲をやり始めた。「オペラ座の夜」では、実に大掛かりなプロダクションに着手した。セカンド・アルバムでいくつかやった、より複雑でオペラティックなものを計画したんだ。「オペラ座の夜」と「華麗なるレース」は実にアレンジが盛んだった頃だよ。
「世界に捧ぐ」の後は、よりベーシックなロックン・ロール・サウンドに戻ろうとした。「ジャズ」はヨーロピアンな雰囲気だったね。一風変わった音の集まりで、アメリカではあまり受けなかった。「ジャズ」の後にはライヴ・アルバムを義務的に。誰もが「ライヴ・アルバムを出すべきだよ」というんだけれど、いざ出してみると買ってはくれないものだ。「ザ・ゲーム」は新しい環境で得た結果だ。ミュンヘンで、新しいエンジニアと仕事をすることで、まったく違うアプローチが出来たね。僕達はもう一度、バッキング・トラックに重きを置くことから始めたんだ。リズムと明快さが強調された。各トラックを組み立てるのに苦労したよ。『愛という名の欲望』は横道さ、ロカビリー・タイプの雰囲気でね。

JD: 僕はクイーンが結成された後で参加したんだ。5番目か6番目のベーシストなんだよ。だから僕からすれば、初期の曲はリード・シンガーがいるパワー・トリオで演奏されている感じだったね。あの頃フレディはピアノを弾いていなかった。でも年を経て、スタジオで作業するうちに、僕達は様々なテクニックを発展させていった。ファースト・アルバムからすごく変化してるよ。どのアルバムにも色んな音が入っているけどね。誰がその曲を書いたかで傾向が違うんだよ。

IM&RW: クイーンはこれまでからずっとステージが得意だと言われてきましたね。なぜでしょうか。

FM: エンターテインメントに重きを置いているからさ。おもてなしに4人のミュージシャン参上、ってなもんね。自分達の曲を演奏するたびに違った印象が持てる、ボクはそれが好きだな。『ラヴ・オブ・マイ・ライフ』なんかは、アルバムで聴くのと全く違う。ボク達の曲がそんな風に歌われていくのは気分がいいよ。ボク達自身がどう感じながら演奏するかに因るね。今度、『ライフ・イズ・リアル』をアカペラでやろうとしているんだ、ピアノも何もなしで。そういうことをやってみたい。ボク達の気の持ち具合で曲が色々と変化を遂げるのって気持ちいいじゃない。レコード通りに再現する必要なんてないんだ。

RT: 俺達がレコードを再現しないのは、余りにも複雑で、意味をなさないからさ。ステージじゃうまくいかない。ちょっと速くなったり遅くなったりするのが常だから。もっとドラマが欲しいだろ。力強さが必要なんだ。スタジオでの精妙さに達するわけないんだから、違ったアプローチになるって訳さ。

IM&RW: 過去の曲の中には、とても込み入っていて重厚なものがありました。その時の方が、ステージ上で再現するのが難しかったのでは?

BM: 幾重にも重ねられたものをステージでやるのはいつだって困難なことだった。リピートをうまく使ってハーモニーを入れた部分もあるけれど、残りはいわばハッタリでやり過ごしてきたようなものだよ。自信をしっかり持って演奏すると、驚く程やれるものだね。まるでレコードそのままの音だったと言って来る人々もいるけれど、ライヴじゃたった10分の1しか分からないものなんだよ。あまり知られていない事実だが、人々がライヴで一度に聴ける音は限られている。だからギター、ベース、ドラムスだけでやっていける。ところがレコードだと、より一層異なるパートのあらゆる音に気づく。ライヴだと音量が凄いし、興奮しているから、聴こえないんだろうと思うね。

IM&RW: 『アンダー・プレッシャー』と『クール・キャット』でのデヴィッド・ボウイとのコラボレーションに関して、様々な噂が飛び交っていました。他のパフォーマーとの共作というのはグループ初ですよね。実際のところ、何か問題はありましたか?

BM: 話せばかなり長くなるよ。彼は一緒に働くにはとても難しい人物だった。作業の方法がまったく違っていたせいでね。刺激的ではあったけれど、同時に解決がほとんど不可能でもあった。僕達は恐ろしく頑固で自分達のやり方を通すけれども、ミスター・ボウイもそうなんだ。実際、もしかすると僕達4人を合わせたより頑固かもしれないな、彼は。やりがいはあったと思う。けれども、『アンダー・プレッシャー』を終えた後、どう出すべきか、もしくはボツにしてしまうべきかで絶え間なく言い争った。デヴィッドは一からやり直したがった。僕はもうその時には匙を投げていた。なぜなら僕がやってみたいことからかけ離れてしまっていたからね。でもあの曲には沢山良い部分も残っているよ。妥協があったしね。フレディ、デヴィッド、そしてマックが、すこぶる骨を折りながらミキシングを行っていた。ロジャーもある程度黙っていたな、彼とデヴィッドは友人だから。
もう一つの『クール・キャット』の方ね、こっちにはデヴィッドはバッキング・トラックを入れただけだった。皆、ちょっとした飾り程度以外の何物でもないと思っていたはずだ。これを使ったからと僕達は彼に儀礼的な手紙を送っておいた。そうしたら「あれは除けて欲しい。満足していないから」と言ってきた。まずいことに、アルバムがリリースされようっていう前日になって。それで僕たちは足止めをくらって、アルバムのリリースが延びたんだ。

IM&RW: その経験が、今後のコラボレーションの妨げになりますか?

BM: いや、特にそうはならないんじゃないかな。機会があれば、やるまでだ。彼との仕事はとてもやりがいがあった。彼がどうやって物事を進めるのか、大変興味深く見させてもらったよ。僕達には一緒に仕事をしたい人物が何人かいるし。

IM&RW: 誰です?

BM: 僕達4人の尊敬する人物がそれぞれ全く違うのは確かだ。でも全員が名前を挙げるのは、エリック・クラプトン。スティービー・ワンダーも皆好きだね。

IM&RW: オーディエンス層はどの辺りでしょう?

BM: 変化しているよ。「ザ・ゲーム」では若いファン達が新たに沢山増えた。『愛という名の欲望』や『地獄へ道づれ』のおかげで、人口動勢が--この言葉、最近の流行なんだ--少しばかり変化した。でも僕達には、『炎のロックン・ロール』や最初のツアーの頃からのファンもいる。素晴らしいことだ。そういう人達は、どうして昔のような曲をしないのかと文句をいうこともあるけれど、今でも楽しんでくれていると思うよ。僕達は変化しなくてはならないんだ。僕達自身が興味を持ち続けるためにも。誰に感謝される訳でもない。一般的に言って、何かを買ってそれが気に入れば、人々はもう少し欲しくなる。でも、もっと与えることが必ずしも良策だとはいえない。それが僕のセオリー。なぜなら彼らはしばらく経つとこう言うからなんだ、「おや、なんだ、また同じ物か。ワンパターンだな。もう買う必要なんかないや」とね。

IM&RW: フレディはよく、クイーンの曲の歌詞の内容はポイ捨て可能だと言っていますね。中身に意味なんてほとんどないと。本当ですか?

RT: なんらかの意味を持っている場合だってあるさ。エンターテインメントを供給することだって、言ってみればちょっとした意図だ。フレディはいつもそういうのをポイ捨て可能だとエラそうに退けてしまうんだ。俺たちの音楽に横柄なものなんてない。基本的に、人々に楽しんでもらうためにここにいるようなもんだから。希望と知性に満ちた音楽を作っているんだ、商業用じゃなくて。俺達は変化が好きだ。色々言いたがりでもある。だが、歌詞は深刻じゃない。『アンダー・プレッシャー』がどういう意味なのか聞いたら皆笑ったよ。ごくシンプルに愛を唄っただけなんだ。一番野暮ったくて、無粋な愛を。

JD: 言葉にはなんらかの意味があるものだよ。『地獄へ道づれ』にはあんまりないけど、僕の他の曲には意味がある。一つ二つは考えを込めようとしてるんだ、意味とか、物語をね。僕達全員がそれぞれ書くものだから、曲を書いた各人の個性に因っている。中にはほとんど意味のない曲もあるけど。みんな違うのさ。

BM: うーん、フレディはいつもそんなことを言うね。僕は違うと言わせてもらうよ。大抵の場合、何かを伝えようとしているんだから。僕は平和について非常に関心を抱いているんだ。だから僕の多くの曲の背後にはそれらが込められている。うわべだけで語っているようでも、根底の考えなんだよ。僕が強くそう感じることの一つだ。僕はいつでも何かを伝えたいと思っている。音楽はその最良の方法だ。あらゆるレベルで相手に衝撃を与えるからね。ボディに、心に、というように。なぜならその歌を歌うことで、あれは何だったのだろうとじわじわ思うからさ。感情を引き出し、考えを喚起するんだ。僕たちの最良の音楽とはそういったものだ。

IM&RW: 貴方達にとって、作曲のプロセスとは?

FM: 基本的には、旋律を書く。たいてい、メロディに添った歌を考えるんだ。時々は歌詞から始める時もあるけれどね。『ライフ・イズ・リアル』なんかは、言葉が先に浮かんだ例だな。そりゃもう何枚も何枚も、あらゆる言葉と格闘したさ。それからやっと歌に乗せた。こういうのがレノン風なんだろうなって思ったもんだよ。
『キラー・クイーン』も先に歌詞を書いた。でもそれ以外は、頭の中にメロディがまずあるんだ。それをピアノで弾いてみて、前はテープに録ってたけれど、今じゃ頭の中に蓄えておく。覚えておくに値すると思ったらそうする。無くなっちゃったら、そのまま。まだ頭に残っているとしたら、それはそれだけの価値があるってことだから、テープに落とすって訳さ。

JD: 曲を書くのは難しいよ。だいたいは、音の方から始めてる。これはあんまりいいやり方じゃないな。メロディを考えても、どうせその後で言葉を入れなきゃならないから、大変なんだ。でも、これが僕の作業の仕方みたいだ。腰を落ち着けてまず言葉を考えて、その後で音楽を乗せるべきなんだろうね。そうやる方がずっと簡単なはずだ。でもどちらかというと、僕には歌詞より音のアイデアのほうがあるみたいなんだなあ。それから、試しに弾いてみようって時に、バンドの皆に自分のアイデアを分かってもらうのも難しいことだよ。

RT: 時々は歌詞からだが、いつもは音からだな。こうやりたいっていう、単なるアイデアだけど。歌を書くのは趣味。キミらが言うような、プロのソング・ライターなんかじゃないぜ。たまにとびっきりのスペルがビビッと閃く時があって、いろんなことが浮かんでくるのさ。ほとんど無意識だから、あんまり手間取らない。俺はポール・マッカートニーみたいに、起きて朝食前に歌を書くような奴じゃあない。曲書きの世界記録を破ろうって勢いだよな、彼は。俺はだいたいリズムから入る。タイコ叩きとして当然だろう。だが、もっとギターを使えたらなって思ってるよ。今はピアノにハマってんだ、シンセじゃなくてな。ぐんと上達しようって目論んでる最中。

BM: 僕はギターを持っていないときの方がうまく書ける。ちょっとしたリフや基盤でも、とても奇妙なことだけれども、不慣れな楽器に向かっている時ほど、歌に関してバランスの取れた見方が出来るものだ。僕はピアノに慣れていないから、ヘンなパターンを弾いてしまったりして、それで急に閃いたりするんだ。ギターだったら、一度持ったら指が進む場所は知り尽くしているからね。ほとんどの場合、僕はどこかに独りきりで座ってじっと考える。それが最良の方法さ。他のメンバーとそれほど変わらないと思うよ。僕はより伝統的なクイーン・ソング、たとえば『ラス・パラブラス・デ・アモール』のような曲を書く傾向にある。さらに、バンドが最も良い状態になるような、メロディアスなものやある種のヘヴィなものをね。ギターとピアノには、そういった濃厚な音がある。実に楽しんでいるとも。近年は少しばかり控えめになってきているけれどね。

IM&RW: 影響を受けた人物は?

RT: 昔のジャズ・ドラマーのプレイ・スタイルはいかしてたよ。あの頃の、リチャード・ニーム、ジーン・クルーパにジョー・モレロ。他には、イギリスの昔のロック・ドラマーなんかも。特にシャドウズっていうグループ。その後は、キース・ムーンみたいな連中だな。ロック・ドラミングに新たな次元をもたらしてくれたような。まったくビジュアルでマニックで、すごかった。第2のキース・ムーンなんか二度と現れないんじゃないかな、あんなにクレイジーな奴なんているもんか。性格モロに出ててさ。ジョン・ボーナムは言うことなしのパワフルなロック・ドラマーだった。第2のジョン・ボーナムになろうなんざ無理ってもんじゃないのか? 俺だってあの2人みたいに叩けるかどうか。

BM: ジミ・ヘンドリクス、エリック・クラプトンに、ジョージ・ハリスン。ジョージはギターの別の本質に気づかせてくれた。とても工夫に富んで、驚くほど広範囲をカバーしているね。自由な発想のできるギタリストだ。

JD: えーっと、うまい人は沢山いるね。年々切り替わっているよ。ずっと昔は、イエスのクリス・スクワイアが好きだった。今は、この人っていう特定のプレイヤーはいない。あるレコードやある曲でのベースが好き、って感じなんだ。

IM&RW: プレイ・スタイルを詳しく教えてもらえませんか?

RT: 取捨選択的、だと思う。マニックな、折衷主義。

BM: 僕はコインを使ってプレイしているよ。今は使われなくなったイギリスの6ペンスだけれど、沢山持ち合わせているのでね。少しきしんだ音が出せるんだ。僕は無意識に小指の隣の部分でダンプさせてるみたいで、それが原因で、きしんだ、少しぱちぱちする音がするようなんだ。まるでつばを飛ばして早口で言うような感じね。プレイを持続していれば手は上がってくるけれど、大抵そこにあるものだから、弦に触れているんだ。僕自身は長い間そのことに気づかなかったけれど、そうしてるって指摘されてね。

JD: 色々だなあ。ベースがかなりフィーチャーされている曲もあれば、ギター重視の曲もある。僕はかなりシンプルにプレイしがちだよ。それが一番楽しめるんだ。時々は指で弾くし、ピックも使う。その曲のスタイルに合わせてね。

IM&RW: ロジャー、貴方はとてもパワフルなドラマーですね。普通は握る部分でしょうに、スティックの太い方で叩くこともあるじゃないですか。ステージでよくスポットライトが当たっているのはそのせいですか? ドラミングがクイーンの音楽を支配しているんだと感じることは?

RT: 分からない。俺達はとても民主的なグループで、お互い沢山影響を受けている。でも、確かにいっぱい歌ってるから、ちょっとばかりライトが当たるんだろうよ。俺が歌っているなんて、ほとんどの連中は気づいちゃいないけど。みんな、フレディがハーモニーから何から全部やってると思っているんだ、彼がシンガーだから。もう少し深く観察してみるってことをしないから、ドラマーが歌ってるのかどうか、あるいはベース・プレイヤーや他の奴が歌っているのかどうかなんて、ちっとも構わないのさ。

IM&RW: どんなタイプの楽器を使っているんですか?

FM: あらま、今何だったっけ? たぶん、ギブソンだと思う。うーん、分からないけど。毎晩、違ったのを手渡してくれるもんだから、連中がどれを見付けたかに因るんでね。ボクはギター・フリークの類じゃないもの。つまりね、ギタリストは好きだけど、ギターやピアノの銘柄にまで通じていないって訳。ピアノはヤマハのが好き。でも技術的なことに関しては、ボクはまったく役立たずさ。耳に心地よい音が出せればなんだっていいよ。

JD: 主にフェンダーのベースを使っているんだ、もう何年も。いつもこればっかり使ってる、というのが1本あって、それもまたフェンダー・プレシジョン(笑)。ちょうど去年、ロスでフェンダーの工場にいる人達に会ったんだけど、なんと彼ら、僕に1本くれたんだ。苦労してるときはそんな余裕ないのに…成功すれば、貰えるんだもんねえ。とてもいいベースだよ。フェンダー・プレシジョン・スペシャルっていうやつ。古いのにはヴォリュームとトーンのしか付いてなかったけれど、今じゃヴォリューム、ベース、トレブルの3つのノブが付いているんだ。ほんとに凄いんだ。『アンダー・プレッシャー』で使ったよ。ミュージックマンも持ってて、こっちは『地獄へ道づれ』なんかで使ってる。とてもタイトな音が得られるから。あとはテレキャスター・ギターをよく使うね。リズムのカッティングがすごくクッキリできるんだ。

RT: ラディック・ドラムスさ。ラディックのドラム・キットがずっと夢だったんだ。イギリスのグループなら皆、こいつが一番だと言うな。凄いドラムだから。イギリスのどんなドラムスよりもいかしてる。ギターは、フェンダーと、シェクターのを使っている。イギリスのメーカーの。こいつら、昼と夜くらい違うんだ。シェクターの方がパワフルさ。主観の問題だろうけど。ギブソンはすごく陳腐なギターになっちまったが、フェンダーはロック・ギターのルーツだよな。

IM&RW: エレクトロニック・ドラムスは?

RT: ドラム・キット一揃い持ってる。 ベースのも。ちっちゃなイギリスの会社製なんだ、シモンズっていう。最近不景気だったが、今また持ち直し始めてるよ。シンセ・ドラムスの改良版で、音の範囲がそりゃ広くてね。大いに使ってるんだ、『地獄へ道づれ』とか『アクション(・ディス・デイ)』なんかで。『バック・チャット』のソロんとこでも聞けるぜ。エフェクトかけると凄いんだ。ドアをバタンと閉める音や、ガチャンとぶっ壊す音なんかを再生できる。トーンのクオリティが良いんだ。今じゃ沢山のグループが使っているよ。ドラムスの代わりにしてる連中もいる。今の流行なんだよな。実際、いかしてるし。

IM&RW: ブライアン、貴方はお手製のギターを弾いていますよね。説明してくれませんか?

BM: 学校に通っていた頃、15歳くらいだったかな、ギターを買う余裕など無くてね。アコースティック・ギターしか持っていなかった。これもピックアップは自家製だった。そのくらいしか贅沢出来なかったんだ。本当は、友達のどのギターよりも素晴らしいのを何か作ってみたかった。家でいくつか実験してみたよ。芯から強くなるように、組み立て方や弦の張り方なんかを色々。それでデザインして出来たのがあのギターさ。ネックは暖炉の木から出来ている。年季の入ったマホガニー製だよ。残りは色々なものの寄せ集めだ。メイン・パートはオークだが、どこから持ってきたのかは覚えていないな。どこかに転がっていたんだろう。僕達はとてもとてもラッキーだった。ロードに出るためにデザインされたものではなかったんだから。その場しのぎに過ぎなかったんだ、買える様になるまでの。それなのに素晴らしく機能的だったんだ。

IM&RW: 今ではどんなギターでも買えるでしょうに、なぜ使い続けているのですか?

BM: 一番しっくりくるからだよ。他の人には合わない。ほとんどの人が、提げてみてもプレイ出来ないんだ。ネックがとても太くて、変な感じがするからだろうね。電気系統もかなり奇妙だし。注意深くなければ、まったく何も得られない代物さ。

IM&RW: 特別な音が出るわけですか?

BM: 非常に温かみのある、ヒューマンな音がね。テレキャスターやストラトキャスターではこうはいかない。真の温かみがないんだ。ギブソンだと温かすぎて、はっきりとした音が出せない。でもあのギターはまさにうまく組み合ってる感じでね。僕にとっては、声みたいなものなんだ。ちょっとばかり元気が良くて、メロディアスで。サステインに何の苦労もないんだよ。ほんとに僕にぴったりなんだ。

IM&RW: 他にお持ちのギターは?

BM: ああ、時々テレキャスターを使う。『愛という名の欲望』なんかの時に。でも本当に稀だ。他のものは使わない。12弦に関しては、オヴェイションを使っているよ。

IM&RW: ジョン、貴方は元々好きでベースを弾くようになったんですか?それとも必要に迫られて?

JD: 後者に近いかなあ、ほんとは。今じゃ大好きなんだけどね。以前はリズム・ギターを弾いていたよ。11歳くらいから始めたんだ。15歳の頃入ってたグループのベース・プレイヤーがあんまりうまくなくてね。それでリード・シンガーが、自分はギターと歌を担当するからお前がベースに替われって。ベースを弾くようになったきっかけって、皆こんな感じなんじゃないかな。もう懐かしんだりはしていない。現にベース弾いてて楽しいもの。それに、僕はギタリストとしてはうまくやっていけなかったよ。

IM&RW: 「ホット・スペース」はシンセサイザーの比率がかなり高めです。昔は避けてきましたよね。「フラッシュ・ゴードン」のサントラでシンセサイザーを使用したことが、今回のアルバムに組み込むのに役立ちましたか?

BM: うーん。そうだね。「フラッシュ・ゴードン」では宇宙っぽい雰囲気のものを要求された。でもロジャーがああいう類のものに非常に興味を持っていたものだから、自然にああなったともいえる。数年前から、彼は自分の曲でやっていたよ。彼が持ってきた曲を皆でいじり回しているうちに、僕達も演奏したくなってきたんだ。使いたくないと言っていた頃と今では、ずいぶん変化していることに気づいた。最初の頃は融通が利かなかった。単旋律で、ベンドすら出来なかったからね。余りに堅苦しくってひどいもんだった。一方、僕達の音楽は多分にエモーショナルなものだから、僕達自身の声やギターで、シンセサイザーでやれることを全部やってやろうと考えたんだ。ずいぶん考えた結果、シンセサイザーは必要がないという結論に達した。けれども次世代のシンセサイザーは…僕の感触では…よりヒューマンになったよ。ベンディング・デバイスがすこぶる良い。エモーショナルなものも沢山生み出せる。

IM&RW: どんな種類のシンセサイザーを使っているんですか?

JD: メインに使ってきたのは、ジュピター8とオーバーハイムOBX。僕達4人とも、技術的なことにはあまり詳しくないんだけれど、何かを生み出そうと頑張っているところなんだよ。だんだん上達してくるんじゃないかな。このツアーで補助キーボード・プレイヤーを雇ったのは主にこのせいなんだ。フレディだって一度にベース・ライン弾いたり、歌ったり、ステージを走り回ったりは出来ないじゃない。

BM: 気に入っているのはジュピター8だな。すごくフレキシブルで、再生しやすくて、頼りになるんだ。ステージで重宝しているよ。いつでも使い物になるものを持つことが重要だからね。

IM&RW: 今回のツアーで初めて補助のプレイヤーとしてキーボーディストのフレッド・マンデルを雇いましたね。そのことで音楽に変化は?

RT: フレッド・マンデルはとても素晴らしい。彼が演奏してない曲は、ちっとも違わないさ。だが他の曲では、カバーできる範囲が広がって、音に深みが出てきた。基本的に俺達はトリオなんだ…フレディはたまにピアノを弾くけど…だから、もしブライアンがリードに回れば、リズム・セクションを支えるのはベースとドラムだけになっちまう。だからかなり助けられてるよ。キーボード・ベースが強調されてる『ボディ・ランゲージ』や『ステイング・パワー』なんかだと特に。『アンダー・プレッシャー』でも頼りにしてる。デイヴィッド・ボウイが言ってたが、ちょっとばかりシンフォニックになるんだよな。

IM&RW: キーボード・ベースの使用について、詳しく教えて下さい。

JD: この数年で、とても大きな位置を占めてきたね。全部キーボードでやってるレコードだって今は出てるじゃない。『愛の残り火』(訳注:ヒューマン・リーグの曲)なんか、ギターを使っていないよ。年々キーボードが発達してきたからなんだろうね。今じゃ上質のベース・サウンドが得やすくなっている。実際のところ、キーボードのおかげで僕の役目は減ってきてるんだ。ベーシストじゃないメンバーがベース・ラインを直接担当するようになった。例えば…『ボディ・ランゲージ』なんかは…キーボード・ベースを弾いたのはフレディだった。ブライアンは『ダンサー』でベースを弾いたし。だからある意味、僕は余剰人員なんだよね。

IM&RW: でも、それはまた貴方がブライアンと一緒にギターを担当できるということでは?

JD: うん。実は僕達4人とも、レコードでギターを弾いたことがあるんだよ。これが揉め事の原因の一つでもある訳なんだけどね。ギタリストはブライアンだけど、僕達だって弾くこともある。ギターで作った曲もあるんだ、フレディの『愛という名の欲望』みたいなの。フレディはあれをアコースティックで書いたから、自然とギターを弾こうっていう気分になったんだろうね。

IM&RW: ベース・ギターは廃れていくのでしょうか?

JD: そうは思えないな。キーボードは代用品だよ。サウンドが違うもの。

IM&RW: キーボーディストを加えたことで、ステージ・パフォーマンスが一層の広がりを見せているようですね、フレディ?

FM: うん、今じゃ、やらなきゃよかったって思うんだ。

IM&RW: 本当に?

FM: いやいや、ただね、突然気づいちゃったんだよ。ステージまるごとカヴァーしなきゃならないじゃないか、って。今までちっとも気づいてなかったんだけど、キーボードを弾いてる時に体力を回復出来てたんだよね。でも今じゃフロントにいたままで、じっとなんかしてられない。ペースが違うよ。実際、動いてばかりで疲れちゃう。こんなことやらなきゃならないなんて思ってもみなかったさ。

IM&RW: 目下、どんなアンプを使っているんですか?

BM: 昔から同じだよ…VOXさ。

IM&RW: VOX AC30、30ワットのアンプですか?

BM: ずっとこればかり使っている。温かみがあって、カッティングのキレがくっきりしているんだ。とても御しやすい。ディストーションもスムーズにいくしね。今では僕の一部だよ。クラスAのアンプだ。他とは違う。

IM&RW: リピート・ボックスも、まだ改良型Echoplexを?

BM: ああ、試行錯誤を繰り返しながらね。しばらく飽きていたんだが、最近は別のことに使おうとしている。ハーモニーや、リズムをクロスさせるのに使ってきたんだ。1/2から2と1/2秒のディレイで、ハーモニーの層が出来るからね。

IM&RW: ロジャー、貴方はどうです? お気に入りのアンプなどありますか?

RT: いいや。アンプはアンプだろ。俺はブライアンのを使っている、古いVOX AC30。運命のいたずらってやつかな(笑)。

IM&RW: ジョン、もしかして貴方もVOXを使っていると言うんじゃないでしょうね?

JD: 違うよ(笑)。僕はDuplex Limiterを使っているんだ。Panのアンプと、SunnのCNNというスピーカーもね。

IM&RW: あなた方は自分達でアルバムをプロデュースしていますね。そのことは音楽に何をもたらしましたか?

BM: まず始めに言っておくけれど、突然の変化ではなかった。僕達はプロダクションに関して、いつだって 大いに関心を抱いてきた。すこぶる凝り性だから、確信を持って、自分達がスタジオで望むものを得たいんだ、プロデューサーが望むものではなくてね。ごく初期の頃からでさえ、ミキシングに満足できなかったらスタジオに戻って納得がいくまでやり直したことがあった。プロデューサーに迷惑をかけることがしょっちゅうさ。でもそれで自分達の責任でやれると思える範囲が広がっていったんだけれどね。
皮肉なことに、目下僕達が使っているマックという男には…彼はビリー・スクワイアのプロデュースを手がけたこともある人物なんだが…今まで僕達が他の人にやってもらっていた以上のことを請け負ってもらっているみたいなんだ。これは彼が僕達の要求に十分応じてくれるからなんだ。たまに、ミキシングの段階になると、僕達は彼だけを残して何時間か外に出る。で、戻ってきて、すこし助言をすれば、もうそれでいいんだ。
以前に比べるとミキシングがかなり楽になった。前は皆してスタジオに籠りきりで、フェイダーと格闘していたものだ。コンピュータ・ミキサーは役に立つね。自分でプロットして、置いておけば、いつでもきちんと仕上っている。だからエモーションを加えておけば、ちゃんと出来上がるんだ。まったく心配いらないんだよ。

IM&RW: トラックを重ね合わせるプロセスはどういった感じなんですか?

RT: 全てのトラックが異なっているから、すごくとっぴな方法で始めることもある。ドラム・ループやテープのループで始まることもあるよ。ピアノはフレディ、ベースはジョン、ギターはブライアンで俺がドラムス、という具合にカットするのが普通かな。長くなったバッキング・トラックをカットしたこともあるよ。ドラム・マシンを使っていた頃は、俺が後からやり直したりもした。

JD: このアルバムでは、今までグループの伝統芸みたいになってたバッキング・トラックはそんなに多くないんだ。前はピアノ、ベースにドラム、あるいはギター、ベースにドラム、というふうにやってたけれど。僕達はスイスに大きくて入り組んだスタジオを持っていて、そこでたくさんアルバムを作ったよ。デイヴィッド・ボウイと『アンダー・プレッシャー』をレコーディングしたのもそこ。残りはミュンヘンでやったけれどね。

IM&RW: オーヴァーダビングは沢山しますか?

JD: いや、そうでもない。ちょっとばかり手直しはしなくちゃならないけど、5年前ほどじゃないよ。当時はハーモニーやギター・パートをレコーディングするのにスタジオに籠りきりだったんだ。

IM&RW: 他になにか言っておきたいことは?

RT: 俺が朝食に何を食べたか知りたい? 「ユングのすべて」なんてのは?

IM&RW: 素晴らしいですねえ! 私は大学で宗教と心理学の両方を専攻していたんですよ。

RT: なんてこったい、それじゃユングの名前は出さない方がいいな。(訳注:ユングとロジャーは誕生日が同じ。ミック・ジャガーも)

(Vicki Greenleaf & Stan Hyman)


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