:: BACK ::

ウンザリ? ユウウツ? サビシイ? 元気出せよ!

(The Hit '85)
今回はクイーンのジョン・ディーコン。百万長者だ…。
INTERVIEW BY MARTIN TOWNSEND

Click for a bigger image

近頃のクイーンの活気のなさに「ウンザリ、ユウウツ」なジョン・ディーコンが、我らがThe HITからのライヴ・エイドや南アフリカについての攻撃に直面しながら、クイーンの新作シングル「ワン・ビジョン」のことなどを語ってくれる。さて、我々のことはご存知だろう。どうにかして彼を元気付けるには…。

The HITの確かな消息筋によれば、スティーブ・ワンダーは実際自分に関するほとんどのジョークを知っているということだ。それで笑いさえもする、と。

クイーンのベースプレイヤー、ジョン・ディーコンもまた然り。クイーンに関する噂の大半は彼の耳に入っている――フリート街(ロンドンの新聞街)からの最も新しい、また最も汚らわしい噂もだ…フレディ・マーキュリーがエイズだという。

「うーん、誰かが聞いたって話だよ…The Sunか何かだったと思うけど…その頃エイズは新聞をひどくにぎわせていたからね」ジョンはこう説明する。 「それで彼らは電話してきて、本当かどうか知りたがるんだ。もし違うって言ったら、『誰それは否定しているが、云々』ってことになっちゃうだろ…つまり彼らは好きなように言葉を捻じ曲げることができるから…」

エイズの噂は、1973年の結成以来の長きに渡ってクイーンに――特に論議の的となるフレディに――付きまとって来たスキャンダルの最新版である。ここ3年でゴシップ記事は一層頻繁になり、ますます悪質になってきた。クイーンが並居る虚飾ロックスター達を押しのけ、ポピュラー音楽界においてほぼ完成の域に達したことが、フリート街のポップ・ゴシップの売り上げ競争と連動したのだ。

皮肉なもので、ライヴ・エイドへの参加で栄光の頂点に上り詰めたクイーンに対して、ゴシップは新たな深みに入っていく。――グループ中で一番匿名度が高く寡黙なあのジョン・ディーコンを、自分から喋らせるように急き立てたのだから…。

「大部分は、ピート・ブラウン(現在ディーコンのために働いている PR)がやれって言うからやっただけさ」彼は弁明した。「つまり、今は以前ほど一生懸命仕事してないから、時間がたくさん余っちゃったんだ。だから僕は何か時間を潰せることがしたくて…

イタリックは私によるものだ。世界でもっとも裕福なロックグループの一つ(実は世界一?)のメンバーから出たこの言葉は虚ろな響きを宿していた。

落ち込み

表向きには、彼は新しいスタジオのことを話すつもりでここにいる。元クイーンのロード・クルー、ヘンリー・クラランをパートナーに迎えてロンドンにオープンしたスタジオだ。そして、ホット・チョコレートのシンガー、エロール・ブラウンと共に作った新しいシングル「This Is Your Time」の話も。だが彼はそのどちらについてもあまり話題にしなかった。

彼はフレディ、そして次はロジャーのソロアルバムの間の休止状態で打ちひしがれてしまったようである。――「僕は歌えないから、ソロアルバムは作れないし」

「僕らはもう、グループとは言えなくなってる」と彼は言う。「僕らはクイーンとして一緒に働いている4人の人間なんだけど、今は実際、そのクイーンとしての時間がどんどん短くなっているんだ。つまりね、心底僕は暇だったんだ、本当に。ほんのこれっぽちも活動してなかったんだから。ほんとに退屈で、すごく落ち込んだよ…だって、こんなに時間がいっぱいあるのにさ…」

ディーコンにとって、この沈滞は3年前の失敗作「ホット・スペース」の頃から始まっていた。

「皆もがっかりしていたと思うよ。だから次回作はどういう風にするかってことを真剣に話し合った。「ザ・ワークス」では、人々がクイーンを認めてくれるような方向に持っていくことに決めたんだ」

ライヴ・エイド

その結果アルバムは大成功し、クイーンの名はスーパースターダムにのし上がった。キャンプなビデオに包まれた華麗なヒットシングルの美酒――「ラジオ・ガガ」「ブレイクフリー」「ハンマー・トゥ・フォール」「永遠の誓い」などが、衰え始めていたクイーンをもう一度持ち上げ、栄光の日の目を浴びさせた。

ライヴ・エイドでは、鮮やかなまでに劇的で溢れんばかりの存在感によって、より一層地位が高まった。それだけでなく、先月には新たなシングル「ワン・ビジョン」をレコーディングするだけの刺激をも受けている。ライヴ・エイドのおかげで「クイーン・グレイテスト・ヒッツ」が再びチャートに上ったが、彼らは新しいシングルのロイヤリティを提供するのだろうか?

「今のところは、ノーだよ」ディーコンは言う。それではクイーンは、ライヴ・エイドでこっそり寄付をしてきたのだろうか?

「うん。グループの誰かさんがあるものからのロイヤリティを寄付したよ。これ以上は言わないけど。アルバムじゃなくて、出版物だった――曲を書くことで稼いだものさ」

諍いとスキャンダル

クイーン内部で決められるほとんど全ての事柄と同様、ライヴ・エイドに関するディスカッションでも、争いが発生したらしい。ディーコンは何気ない――「僕らはずっと昔からケンカしてるもの」

「新しいビデオ用に撮影をしていたんだけどね、そのあとフレディとロジャーの間で、かなりひどいケンカが始まっちゃったんだ。僕らはこのクリスマスに、全アルバムを入れたボックスセットを出そうとしてる。いい? それで彼らはこの新しいシングルを入れるか入れないかで議論していたのさ。ひとりは入れるべきだって言った。もし入ってなかったら、コンプリート・ワークスって言えないからって…」

彼は微笑みながら首を振った。「僕はまったく関わり合いにならなかった。だってこう思ってたもの…そんなの誰が買うんだよ、って。たぶん、コレクターになら何個か売れるだろうけど、すっごく高いんだよ。40か50ポンドくらいするのにさあ…」

彼はプレスの批評――特に70年代後半、フレディ・マーキュリーが音楽誌との関係を断ち切った頃からの――かなりキツイ毒牙にはまったく動じない。

ジョン・ディーコンは11歳で父親を失い、その激しい打撃については未だに言葉少なである。「辛かったよ、うん」彼は言う。「父さん無しで育つのは簡単じゃない」

おそらくその苦痛のせいで、不快な噂やスキャンダルは余計に残酷に思えるのだろう。

「フレディのために働いてた連中の一人がThe Sunか何かに彼のネタを売った時があったよね。あんなの傷つくよ。自分は平気かもしれないけど、友達や親戚や親だって読むんだ」

クイーンはまもなく、ショーン・コネリーとクリストファー・『サブウェイ』・ランバート主演の「ハイランダー」という映画のスコアを書く仕事にかかる。有名なビデオ・ディレクターのラッセル・マルケイをフィーチャーしていることもあり、クイーンが自分達のアルバムを作るのは先のことになるだろう。

南アフリカ

一方、彼らは南アフリカのサン・シティのカジノ施設への訪問に関して、お決まりだがしごく当然の批難攻撃から巧みに逃れて来た。

ディーコンは最初、施設にはアパルトヘイトはなかったとコメントした。――「金持ちと貧乏人しかいなかった」と――ミュージシャン組合が彼らの訪問に反対したが、「他の人達だってたくさん行ってたじゃないか…」

それではなぜ、南アフリカ政府が一部資金を提供した、アパルトヘイトはないがアフリカ人以外はあえて訪問しようとはしない場所で演奏しようと思ったのか?

「わかんないよ、僕は旅行を楽しんでる」

この馬鹿げた不完全な答は我々の間で宙に浮いた。

「僕は、新聞で読むよりも、直接学びたい方なんだ。つまりね、アパルトヘイトが悪いことだというのは皆知ってるし…」

それなら、どうやって訪問を正当化したのだろう?

「僕らはすごくノンポリなバンドなんだ。政治がらみのことには極力首を突っ込まないようにしてる。望まれてるところへならどこへだって行くさ…」

彼は微笑んだ。クイーンの典型的な人物だ。

今までに出たシングル(UKでの順位)


:: BACK ::