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Written by 砂丘。さん

仔猫が一匹雨に打たれていた。なんとなく日本風の三毛猫らしいが、捨て猫らしく哀しげな瞳は虚ろに空を見つめていました。

と、その視界に仔猫と同じ様に雨に打たれた男が一人、入りました。そしてそのまま、仔猫はその男のコートの中にスッポリと入り込み、仔猫は安心して寝息をたてつつ眠っててしまいました。

その男は拾ったは良いのですが、自分は風邪をひいたらしく、熱が上がり、頭がだんだんボーっとしてきて、フラフラと車道の方向へと足を運んで行きました。

フレディは、衝動買いした服を小脇に抱えルンルン気分で傘をクルクル回しつつ、周りに水滴を撒き散らしながら歩いていると、茶髪の男が車がビュンビュン走っている車道へとフラフラ歩いて行くではありませんか。フレディは驚くより先に体が行動していました。がしっとその男に抱きついて車道から引き離しました。しかしながら、その背後には抱き覚えがあります。そっと顔を男の顔の方へつっこんでみました。

その男はグッショリ濡れていましたが、間違いなくジョンでした。覚えがあるのにもそのはず、前に ふざけてて抱きついたことがあったからでした。

しかも彼は物凄い高熱をはなっているうえ、彼の腕の中であえぎつつ気を失ってしまったため、フレディはその場で踏ん張るしかありませんでした。しかし、運の良いことにスタジオでリフを撮った帰りの、ブライアン&ロジャーが、話込みながらこちらへ歩いてきました。

「手伝ってくれ!ジョンがすごい熱なんだ!!」フレディは力の限り叫びました。始めに気付いたのはロジャーで、ダっと走って来て「大丈夫かっ!」と言いながら手伝います。ブライアンが後から足がもつれそうになりながら、走って来ました。「えっと、此処から一番近い家は…」

ワシャワシャした頭を左右にふりつつブライアンは、ジョンの家が一番近いというのに気付き、皆が雨に当たらないよう、傘を掲げて誘導しました。途中ロジャーが、早く行けよ!この爆発頭が!とキレた事と、フレディが、ジョンの体をベタベタ触っているうちに仔猫が目を覚まし、手に噛みついた事以外は何事もなく着きました。

「火、火は…へックショイ!」そこらじゅう唾を撒き散らし雨で寒さが倍増し、四人揃って(一名意識不明)歯の根が合わないらしくガチガチ音をたて、ストーブの周りで濡れた服を脱ぎ、勝手にタンスをひっかき回し着られそうな物を適当に着ました(ブライアンのパンツが七部袖になってる)。それから毛布を被ったは良いのですが、怪しい被り物の集団に成り果てました。

(こんなとこファンに見せられないよ…)

三人が三人供同じこと考えていると、いきなりフレディが低く忍び笑いをしだしました。ブライアンもロジャーも不思議がって覗き込むと、フレディがジョンを着せ替え人形にして遊んでいました。 (おいおい…)二人は苦笑し、顔を見合わせました。

ハッ!二人の視線に気付き後を振り返り、思わずズザザーと部屋の隅っこにズっていき、ゴンッと後頭部をぶつけて、ジョンを右腕に仔猫を左腕に抱いたまま一人悶絶をうっているフレディ。彼を尻目に、仔猫は腕をすり抜け火の前で丸くなりました。

「コイツなかなか大者だな」ブライアンはニヤリと笑い、仔猫を優しく撫でて、自分の毛布に入れてやり。そして「可愛いなコイツ。」ロジャーも仔猫を撫でました。

(僕はジョンの方が…)フレディはジョンのまだ濡れている髪を撫でて、可愛いレースの付いた白いシャツのボタンを外し、優し〜く、しつこ〜く愛撫してたらジョンがピクリと、動いたと思ったら、パカッと目が開いて、ロマンティックに見つめ合う訳でもなく、ジョンの切長な目が刃物の様に鋭い三白眼になり、フレディを鋭くエグルように睨みつけ、彼の手を払って頬に平手打ちをクラワセました。

「僕は玩具じゃないぞ」唸るように吐き出した言葉は、フレディの心を直撃しました。あ〜ぁジョンを怒らせちゃったよ…。火に当たってた二人は、ジョンの発っしている業火の炎に飛び火しないように、無言の争いから遠ざかり、寄り添って見守るしかありませんでした。(ジョン怖ええ〜)

フレディは隅っこでブルブル脅え半泣き状態。ジョンは睨みを利かせて服のボタンを留めていましたが、怒ったためか血圧が上がりそれと共に熱も急激に上昇したので、また倒れてしまいました。

(うっ…此処は?)ジョンが目を覚ますとメンバーの顔、妻の顔、医者や看護婦さんの顔がありました。 「ジョンごめん怒っらせるつもりはなかったんだ」フレディはしんみりと言い、点滴のために出された右手を握り泣き出した。ジョンは熱った顔でニコリと笑い、こう言った。「あの仔猫、君が飼ってくれない?」フレディは頷いて大事にすることを誓いました。安心したジョンは仔猫の様に夢の世界へと降りて行きました。

― THE END ―

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