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架空対談【Mami Matsuda × Veronica Deacon】

Written by ぼーいんぐ819さん

(*一部敬称は略させて戴きますのでご了承下さい)

<序>

何時の間にかジョン・ディーコンのみならずその夫人であるヴェロニカに対し、より熱い想いを馳せていたmamiは、 Deaky Weekly英語版で鍛え上げた語学力をフルに発揮しヴェロニカ宛の手紙を書き送っていた。 とはいえ、さすがのmamiもディーコン家の住所など知る由もない。そしていかにジョンの連れ合いといえども 夫人宛の手紙を英国のクイーン・ファンクラブに送るのは躊躇われた。 そこで彼女が取った非常手段は、ロンドン近郊のキリスト教会という教会総てを調べ上げ、同じ内容の手紙を 量産しては、辛抱強く送り続けることだった。

mamiはどうしてもヴェロニカに訊きたい。ジョンの研究者として生きる彼女にとって、ジョン本人と語りあう夢は 決して消え去ることはないが、スターとそのファンの超えられない厚い壁を幾度となくシュミレーションしている mamiには、求めている答えが本人からは決して返って来ないことがわかっていた。 恐らくジョンという人間はどんなに深い信頼を寄せる相手にも【あのこと】については語らないだろう、と。

時々ジョン・ディーコンファンを公言するのはある意味抽象論的な自己表現だとmamiは思う。 境界線の向う側に存在する筈の人間でありながら、ジョン・ディーコンが垣間見せる普遍的言動は、 彼自身がひどく無防備にファン(=線のこちら側)寄りに存在しているとさえ思わせた。
だが現実に彼・ジョンディーコンはどこにもいなかった。思春期の自分探しの如く、ファンは自分のジョン・ディーコンを 必死で見つけだそうと試みるが、ジョン・ディーコンは当の本人をも裏切り傷つけながら、ますますファンから遠ざかって 行く姿だけを鮮明に焼き付けるだけだった。ファンは溢れる想いを昇華させる為、ジョンディーコンの過去を辿り始める。 現在がそこに存在しない以上、彼女・彼等は共に同じ時を生きる対象ではないジョンにますます熱を上げるしか残されて いなかった。それぞれのジョンがいつしか形を成すその時にこそ虚像は不動の位置を占め、さらには本当の姿などという 生々しく無粋で不恰好な現実を排除し始め、完璧な姿の虚像だけが主導権を握るのだ。

だがmamiにとって、ジョン・ディーコンはハナから決して虚像などではなかった。
否、むしろ何処か彼女自身に近い、魂が魂を呼び寄せる見えない宿命であるかのように、早い段階から彼・ジョン・ディーコンの 人間性に焦点を当てていた。『何故彼は…?』津波が押し寄せる如くの疑問に対し明確な答えが与えられない事態は、奇しくもジョン がかつて辿った【数学系学者】を拡大解釈した上での追従者となるmamiにとって、致命的な苦悩とも呼べた。 如何なる疑問も本人不在の事実の前では、風前の灯火同然である。 しかし、mamiには真の学者の才が与えられてもいた。いわゆる思考の言語化と理論化である。ジョン・ディーコンに関するどんな些細 な記事であろうと、そこに未知の人格が記述されている物なら尚のこと、mamiは次第にその輪郭を顕しつつある自分自身のジョン・ ディーコン像との相違を図る為、捜し出すことに心血注いだ。

そして時折その意味をも自問する。何故ここまで、一人の音楽家に固執するのであろうか?

【人間の行動には必ず理由がある】とするウィーン第三学派のロゴセラピーでは、人生において意味こそが重要なのだと明言している。意味とは辻褄を合わせるということではなく、何故それを求めるのかに集約することとも換言できるのではないか。 mamiは一切を語ることなく表舞台から身を引いたジョン・ディーコンに、いつしかその思想が重なって行った。

ジョンをずっと見て来たヴェロニカ。なんとしても彼女から、ジョンという人間が背負ったジョン・ディーコンとしての業を、もし許される ものなら訊きたい、その想いがmamiをこの手段へと導いた。

『もしそちらにヴェロニカ・ディーコンさんという方がいらっしゃいましたら、どうかこの手紙を渡してください』

その数は優に100を超えた。 気の遠くなるこの作業はしかし、時に友人を、時に敵を作りながらもいつしか一部の物好き達の好奇心を刺激して行った。 また、このことは現代的事象の象徴と言っても過言ではない事態を招いてもいた。 彼等教会関係者の一部にmamiのファンクラブが出来あがるのだ。 美しい言語表現者mami、読み手を感動させる奇跡のひと、と。 そしていつしか手紙はヴェロニカ本人の許に渡り、4通目の手紙を読んだヴェロニカはmamiへの返事を書くことになった。

【私はこの教会に通っています。貴女もご存知の諸事情が私の住所を明記させるに至りませんが、私の夫を 心から支えて戴いたことを感謝すると共に、貴女に巡り会わせてくださった天の父に感謝の祈りを捧げました。 どうかまた、お元気でいらっしゃる声だけでもお聞かせ下さい】

…実際私はこの一連の完全な流れと美しすぎる誤解を【Forrest Gump Syndrome】と名づけからかっていたが、 遂にはmamiからの手紙を握り締め、来日を果たしたヴェロニカが目の前に立っている現在、Forrest Gumpがいみじくも 言い当てていた名科白―「Life is like a box of chocolates, you never know what you're gonna get」を実感せずにはいられない。

【新千歳空港にて・ぼーいんぐ記】


<いきなり番外編>
【対談当日・一時間前】札幌市内某所


m:「あのう、ぼーいんぐさん…?」
b:「へ…?あ、mamiさん。ハ〜イ!」
m:「いえ、あの、急にハ〜イ!と云われましても…。ところでいったい何を書いてるんです?」
b:「昨日の『ヴェロニカ来日衝撃メモ』を忘れないうちに打ち込んでしまおうと思って…。あ、駄目ですよまだ見ちゃ」
m:「どうせ一緒に載せるんちゃいます?隠さんと見せて下さいよ」
b:「あ、あ、それはまだ…」
m:「えぇと…これは序文ですね?」
b:「駄目だったら!読まないで下さいよ〜!」
m:「ふんふん……」
b:「…………」
m:「…え?"ジョン・ディーコンファンを公言するのはある意味抽象論的な……とmamiは思う"…って、そんなこと思っていませんよ!」
b:「いいの、いいの。適当、適当」
m:「は、適当…?そないなことでいいんですか?待ち望んだヴェロニカさんがせっかくいらしてくれてるというのに」
b:「要は対談の中身ですよ、な・か・み。こんな刺身のツマみたいな箇所は誰も期待してないし、しっかり読みませんって」
m:「そんな…侮ってはいけませんよ!ウチのサイトの皆さんは微に入り細に穿ってしっかり読んでくださる方が多いんですから」
b:「はぁ…そうなんですかあ?でも『びにいり、さいにうがつ』なんて憎いねーっ!カッコ良すぎ」
m:「何を言ってるんですか。…それにしても可笑しいですね、この最後のところなんか…なぜ今頃フォレスト・ガンプなんです?(笑)」
b:「それしか思いつかなかっただけ。…あのねぇmamiさん、私はチョーいい加減なんですから、早く実感して馴れましょう。ね?」
m:「わかってますよぉ。少しは」
b:「少し?」
m:「いや、それは言葉のアヤで……とにかく、もう間もなくヴェロニカさんがここに来る時間ですし」
b:「あ?もうですか?そりゃヤバイっすね、こんなのはさっさと片付けないと」
m:「ぼーいんぐさんは…もちろん同席されますよね?」
b:「へっ?そんな、わかりきったことを聞かんで下さいよ。英語聞きとれん人間がいてどうするんですか?あたしゃ帰ります」
m:「えっ!?…帰る?本気ですか!?」
b:「はい。とにかく対談テープは忘れないできっちり録って下さいね。後でテープ起こしが済んだら↑の文つけて発表ですからね」
m:「何だか、だんだん緊張してきました…。そない急いで帰らんと、このまま一緒にいてくださいよぉ」
b:「ヤ〜なこった!ほれほれほれディー菌サイトのカリスマさん、さあ頑張っておくれー!! んじゃね〜♪」
m:「ぼ…………」

愕然とするmamiの目前でへらへらと手を振りながら、ぼーいんぐはドアの向うに消えて行く。 mamiが痛感するまでもなく、人選の誤りはもはや決定的だった。 否、選ぶ余裕が仮にあったなら、誰も好き好んで航空機製造会社を名乗る変人中年に協力を求めたりはしなかった筈だ。

mamiは凄まじい孤独を感じた。たったひとりで自分自身と闘う孤独を。深く長いため息をひとつつき、居住いを正した。 ヴェロニカが来日することを決めた最後の手紙を読み返し、緊張のあまり吹き飛んでしまいそうな質問の数々を思い出し ては、冷静にあろうとゆっくり深呼吸を繰り返す。 時計は無情に時を進めて行った。


【ヴェロニカ登場・対談開始】

ドアを開くと、長い金髪を後ろで束ねた背の高い白人女性が立っていた。 昨日空港で初対面を果たし感激の言葉を交わした筈なのに、今日はもっと落ち着かない気持だ。 mamiはどんな挨拶を交わしたのかもすぐに忘れてしまうほど緊張していたが、 ヴェロニカが「昨日空港で一緒だったちょっと変わった人は?今日はいないのね」と意味深な笑顔を見せたことで 幾分気持が解れていくのを感じていた。 予想以上に若く見えるヴェロニカではあったが、笑顔と共にはっきり現れる目尻の皺や臆面もなくmamiを見つめる 瞳の奥に、ジョンと生きて来たこれまでの人生の深さを読み取らない訳にはいかなかった。 どこをとっても6人の子供がいる母親とは思えない。 凛としてそこにあるオーラの眩しさに包み込まれながら、mamiは不可思議な懐かしさを覚えるのだった。


mami(以下mで表示)「ようこそいらしてくださいました。本当に遠い所を…感謝の言葉を幾ら言っても足りません」
Veronica(以下Vで表示)「お会いするのがとても楽しみでした。沢山のお便りをありがとう」
m:「まだ現実感がなくて、何からお話するべきなのかわかりませんが、まだ小さなお子さんがいらっしゃるというのにこんな遠くまで来て戴いて…」
V:「心配しないで。子供達には親がついてるわ、貴女もよく知ってる人よ(笑)」
m:「その方は(笑)、今回の貴女が決意された来日について異論はなかったんでしょうか?」
V:「ええ。私は彼に貴女からのお便りを全部読んで聞かせたの。そして『私はこの人に逢いに行くわ、文句ある?』って(笑)」
m:「ディーコン氏は何と?」
V:「『日本では靴を脱ぐ習慣があるから、靴下には注意した方がいいよ』ですって」
m:「(笑いを堪えて)ご一緒したいとはおっしゃらなかったんですか?」
V:「本当は来たかったみたいね。とても懐かしがってたわ。今でも彼にとって日本は特別な国なんですもの」
m:「何よりのお言葉です」
V:「だから何とか一緒に…と思ったみたいだけど、3番目の息子の心配があって」
m:「ジョシュア君ですね。お年頃の息子さんだとご両親もいろいろとお気を使われて…」
V:「あらやだ、逆よ。ジョシュアがジョンの心配をしたのよ。『日本は今でもジョン・ディーコンファンが多い国だから、お忍びで行くにしてもその姿はないだろう』って。子供も大きくなるとどちらが親なのかわからない口ぶりよ」
m:「好奇心でお尋ねしますが、ディーコン氏はそんなにハゲしく変わってしまったんですか…?」
V:「貴女が彼を見た最後は…」
m:「97年のベジャールでのフォトが私の知ってる最新写真なんです」
V:「例えばどんな宝石でも原石は石ころと同じ様なものだし、芝生だってこまめに手入れしないと目も当てられないわよね」
m:「つまりディーコン氏はあまり緊張感のない毎日を過ごしていらっしゃるのだと…?」
V:「きっと貴女が思ってる通りだと思うわ。もともとあの人は有名人の自覚が殆どないの。信じられるかしら?」
m:「ええ、信じられる気がします。しかし一方で、否が応でもディーコン氏は自分の知名度を折に触れては見せつけられて来た事実も あると思うんです。どこへ行っても取り囲まれたり、ファンに追われたり、と」
V:「確かにそれが彼自身だけでなく我々家族に影響していた時期もあったけれど、凪に戻るのは案外早いのよ、どんな嵐が来てもね」
m:「共に生きて来た相手が世界中にファンを持つスーパースターになった時、ヴェロニカさんはどんなことをお考えになりましたか? また、スターである夫が帰って来た時に不安はありませんでしたか?」
V:「先ず最初に2番目の質問だけど、我が家にスターが帰って来たことは一度もなかったわよ(笑)。ちょっと変わった仕事に就いてる夫が、長い出張から戻ってくるだけのことだもの。そりゃ勿論、なかなか逢えない不安や手を貸して欲しい時に側にいてくれない不満も若い時には感じていたし、自分の語りたい言葉を受け取る筈の相手がそこにいない寂しさもあったわ。私は常に夫と共に暮したかったわけだしね。それでも自分に与えられた課題があるのは幸せね。つまり彼が帰るべき家に私と子供達が元気でいること、それが何より大事だったってことなの。最初の質問の答えも似たようなもので、私の捉え方は基本的に同じだから、夫が世間からスターと呼ばれるのは単なる結果に過ぎない、という考え方よ。呼ばれる名前がどうであれ、私にとってのジョンの大きさは変わらなかったもの」
m:「それは勿論、今でもですよね?」
V:「そう信じたいわ(笑)」

(お茶を入れ替えるmami。その間Deaky Weeklyの英語版を読むVeronica)

m:「今回、私はヴェロニカさんにぜひともお伺いしたいことが沢山あるんです」
V:「ええ。お手紙にも書いてくださいましたものね。出来る限りお答えさせて戴くつもりです」
m:「ありがとうございます。早速ですが、先ず私はヴェロニカさんとコンタクトを取りたいが為に、非常手段を使いました。これは常識では到底考えられないやり方だったと思うのですが、この部分をどのようにお感じになりましたか?」
V:「最初は『またか…』と思ったわ。実はこの方法は古典的なの。ヨーロッパ人やアメリカ人は教会へ行くのが当たり前だから」
m:「では私の前にも教会宛に貴女へのお便りを出していた人達がいたんですね?」
V:「そう。正確には私宛のじゃなく、私からジョンに渡してくださいと書いてあるものだけど」
m:「では私がヴェロニカさん本人に呼びかけた内容だったことには驚かれましたか?」
V:「私個人に向けられる言葉であっても、さほど驚きはしなかった。ジョンの家族であることは、即ち何事にも驚いてはいられない側面もあるのよ、さっきの話と矛盾するかもしれないけれど」
m:「驚いていられない側面とは具体的にどんなことでしょうか?」
V:「そうね…外出から戻った時、キッチンに夫とポール・マッカートニーがいたり」
m:「それはびっくりしますよ!で、リンゴとジョージは?(笑)」
V:「息子にそういう名をつけなかったことを後悔させたい訳ね?(笑)とにかく、私がジョンへの間接的な手段として利用されていない手紙が教会宛に届いたのは、貴女からのが初めてだったわ」
m:「正確には私も決して貴女を手段として利用していないとは言い切れないと思っていますが…」
V:「つまりそれはカント的な発想かしら?」
m:「はい。定言命法第二式には【人間は、決して、目的の為の手段にされてはならない】とあります。それを知りながら…」
V:「でもカントは【例えそれが、それを歓迎した相手に対してであっても】とまでは言及していない筈よ。それでも彼が何か文句を言うのなら今すぐカントの本を捨てるべきね。人を雁字搦めにするような哲学なら貴方も同罪よ、と言ってやるの」
m:「歓迎して戴けたと理解しても宜しいのですね?」
V:「もちろんよ。そうじゃなきゃ、ここにいないわ。貴女の手紙には他人に対する敬意が溢れていたし、何よりジョンを人間臭く表現してくれていたことが私にとっての大きな魅力だった。彼は今、ただの人間なのよ」
m:「そう言って戴けるなどとは夢にも思っていませんでしたので、とても光栄です。私が考えていたディーコン氏がヴェロニカさんの側にいる人と近かった訳ですね?」
V:「そう、本質的な意味でね」
m:「何者でもない人間としての暮らしを営む中で、ディーコン氏は過去の、と言いますか、彼自身が身を置いていた音楽界に対する未練はもうなくなってしまったのでしょうか?」
V:「全くない、というのじゃないでしょうけど、彼の中には…月並みな表現かしらね…多分、こうありたかった自分がずっといたのよ、クイーンの一員という大役を背負ったジョン・ディーコンであることとは裏腹に。でも、それは決してクイーンのメンバーであったことを消し去りたいとか否定するという意味とは違うのよ。あれだけ大きなバンドになったクイーンの土台でいたことを、彼は心底楽しんでいた時期も当然あったから」
m:「では、何時からディーコン氏は自分の世界に引き篭もってしまったのでしょう?」
V:「それはまだ言えないわ」
m:「なぜです?」
V:「あくまでもそれは私ではなくジョンの身に起っていることだし、第一、それを言ってしまったらこの対談は終わってしまうもの(笑)。 もし私だけの意見でもいいなら、一番最後に話したいわ」
m:「わかりました。最後にお話して戴くことに致します。それでは質問を変えますが…」
V:「ちょっと待って。ねえ、どうにかならないのかしら、この対談。そろそろ堅物のイメージなんてお終いにしましょうよ。誰の差し金だか知らないけど、このまま大真面目に喋り続けるのって辛いわ」
m:「それは私も同感です。何しろツッコミのチャンスが全くないのはホントに苦しいですよ(爆)」
V:「そう?良かった(笑)ぜひ、いつもの貴女とお話したいわ」
m:「ありがとうございます。ではいっそのこと、場所も替えませんか?隣の部屋にコタツがありますが…」
V:「面白そうね。そっちへ行きましょうよ」
m:「では、こちらへどうぞ〜」

和室の前でヴェロニカがブーツを脱ぐとタイツのつま先にちいさな穴。気付いてもいないのか全く気にするふうもないヴェロニカに、堪らず両手で口を覆い、声を押し殺して肩を揺らすmami。
コタツテーブルの上にはみかんとバターピーナッツが用意されている。mamiはどこからかチーズトーストとティー・ポットとコーヒーポットそれにカップを運んでくる。


【対談の異変・ツッコミ解禁〜知性に隠されたもうひとりのヴェロニカ、mamiの炸裂〜】

m:「お話の前に、紅茶かコーヒーはいかがですか?」
V:「じゃあ、紅茶をいただくわ」
m:「はい。……どうぞ」
V:「ありがとう。………ねえmami、怒らないで聞いてくれる?これ、コーヒーの味がするんだけど…」


m:「ディーコン氏と貴女は似たもの夫婦と言われませんか?」
V:「…ねえmami、いつまで『ディーコン氏』なんて堅苦しく呼ぶつもり?ジョンで充分よ。それともあなたの好きな他の呼び名でも構わないけど」
m:「わかりました。では、オヤジ、と呼ばせて戴きます」
V:「オヤジ、ってどんな意味なの?」
m:「一般に父親を意味する言葉です。私のサイトではゲストの皆さんがジョンをこう呼んでいるんですよ、心からの親しみを込めて。 ただ、中年男性の蔑称とも受け取られるのがアレなんですが……」
V:「ふぅん『オヤジ』ね。面白いわ、それで行きましょう」
m:「で、先ほどの質問なんですが、どないですか?」
V:「そうね、似てる…とは別に言われないけど、どうして?」
m:「日本では長年一緒にいる夫婦は、顔や形が違っても何故か似てくると言われていまして」
V:「そう言われても嬉しくはないけど…どこか似てたのね?」
m:「細かいことは気にしないあたりが似てるような気がしまして(爆)」
V:「あぁ、そういうところは確かに似てるかもね。mamiはジョンがどんな男だと思ってるの?」
m:「それ…言っても良いんですかねぇ?」
V:「聞きたい」
m:「もちろん素敵な人です」
V:「言ってくれるわね(笑)それから?」
m:「…多分ぶっ壊れたオヤジだろう、と」
V:「ブロークン・オヤジ…?え?え?どういう意味?」
m:「つまりなんと言いますか…人格的な破壊活動が彼に起こった、或いは未だに起り続けているであろうと、そういう疑惑なんです」
V:「なるほどね。彼ってそんなに変なの?」
m:「あ、そんなには…いや、やっぱり変…だと思います。ただ、あくまでも私は彼に心底惚れ込んだ人間であるということが前提で、そこはご理解戴きたいんです」
V:「わかりきったことを敢えて言わなくていいの(笑)具体的にどこが変だと思うの?」
m:「常にサイトで盛り上がるのが着るものに対する執着心のなさとミョーなセンスですね。何故ステージでも彼はパジャマやサロペットだったのか?後年もTシャツ短パンでウェンブリー・ライヴに出てましたよね。あのクイーンにいながらにしてあのセンスはなんでやねん、と」
V:「ないわよ、ジョンにセンスなんて」(バターピーナッツをボリボリ食べる)
m:「は…?」(驚きのあまり、口に入れかけたチーズトーストを皿に戻す)
V:「ないの。そもそも身に付けるもののセンスなんてのは期待出来ないわよ。ことステージ衣裳に関しては、誰に何と言われてもわからなかったんだから。単純明快よ」
m:「(絶句)…それに対して貴女はご意見などをおっしゃらなかったんですか?」
V:「言っても無駄な人に?そんな面倒なこと…放っとくに限るわ」
m:「はぁ…無駄ですか。でもお子さん達はさすがに黙っちゃいないでしょ?」
V:「そこなのよね、頭が痛いのは。下の2人を除いた4人がそれぞれ違う意見を言うから却って混乱するのよ。挙句は6人が6人とも『パパのセンスは最悪だ!』よ」
m:「えらい団結力ですね。そういう時、オヤジは何と?」
V:「『別に悪いとは思わないけどなぁ、子供達は何を考えてるんだ?』って。だから私も『そうね、悪いと思わなきゃいいのよね』と言うわ」
m:「…天然ですがな…。いや、そこではぜひ『ボケ倒しはやめんかい』言うてやりませんと(笑)…でもまあ、ヴェロニカさんは心が広くていらっしゃるから」
V:「…そう来るのね?(笑)はっきりしてるのは、ジョンは人に何を言われても自分の着たいものを着る人だってことよ」
m:「オヤジに迷いはない、と?」
V:「服に関してはね。でも他は違う。ジョンはいつも迷うの、何にでもよ。でもそのうち面倒臭くなるから、散々迷った挙句にその時の気分で決めるのよ」
m:「極めていますね、オヤジ振りを(爆) それなら後悔ばかりしてるんちゃいます?手が掛かりそうで大変ですね」
V:「よくわかるわね(爆)手が掛かるなんてナマやさしいものじゃないわ。子供よりタチが悪い」
m:「すっかりヴェロニカさんに頼り切ってるようにも思えるんですが」
V:「面白い話があるの。子供は大人になり切れない親を持つとその親に気を使うものなのよ。息子がジョンより先に大人になってこう言ったわ。『ママ、僕等のことは心配しなくてもいいよ。でもパパにはママが必要なんだ、わかるよね?』」
m:「はぁ〜、子供はなんて偉大な大人なんでしょう!それに比べてオヤジは…」
V:「情けないもんよ。そうそう、もう大分前だけど、ジミー・ペイジが家に来たの。もともと家が遠くなかったからたまには行き来してたんだけど、だんだん2人とも酔っ払って言い争いが始まったのね。…実に下らないんだけどお互いが相手のことをケチだと言い張って…ジミーが『悔しかったら城を買え!お前の家なんかテニス・コートの休憩小屋だ』と言い出したの。さすがにジョンもカチンと来たのか、歳若い相手と再婚したばかりのジミーに『若い女なら誰でもいいと思うキミとは価値観が違うんだよ』と言い返したわ。ジミーは言うに事欠いて『俺は金を払ってでも好きな女と一緒に暮したいんだ。慰謝料惜しさに離婚も出来ないお前とは違う!』と吐き捨てた…もう泥沼よ。 その時つくづく思ったわ。どうしてこうも成長出来ない男ばかりなの?って」
m:「(笑いが止まらない)…日本には『目くそ、鼻くそを笑う』いう言葉があります。ぜひ2人に教えたいですよ」
V:「…とにかく子供達は皆、私がいちいち忠告をしなくても自分で選んで決められるの。でも大人になり切れなかった親の方は迷いがあると殻に閉じ篭もる。自分が決めるべきことでも、失敗を恐れて決められないのかしら。誰かに決めて欲しいみたいにね」
m:「私のサイトではゲストが大きく二分されます。あくまでもジョン・ディーコンが理想の人物で神格化している正統派のファンと、どちらかと言えば自分の隣人的な扱いを好む…酷くなるとジョンを同次元に引き摺り下ろしておもちゃにする人も…双方ともいるんですが、現在音楽活動をしていないにもかかわらず、オヤジ人気は、少なくても私のサイトに集って下さるゲストの間では多大なものがあるんです。その熱意溢るるファン達がオヤジに帰って来て欲しいと声の限りに訴えたら、彼はまたステージに立ちたいと思うでしょうか?」
V:「そうね…そうであって欲しいわね。その前に私がどうして貴女に逢いに来たのかを、ちゃんと説明していなかったわよね?」
m:「ええ。よろしければぜひお聞かせ下さい」
V:「ジョンは今、元気に暮しているわ。子供達との毎日を楽しんで、何者にも邪魔されない普通の暮しを満喫してる。まぁ時には街で声を掛けられてもシラを切り通したり…いろいろとやってるけど(笑)、今はとにかくジョンが生きて行きたい姿のジョン・ディーコンを生きてるわ。私は彼がやりたいようにやってるのはキライじゃない。でも彼から何かを言い出すのを待っているの。言い出せないでいるような気もするけどね。私、少し前にニュージーランドの親戚を訪ねたわ。その時やっとひとりになって、ゆっくりジョンのことも自分のことも考える充分な時間を作ったの。彼は本当に音楽界をやめてしまって良いんだろうか…?ってこともね。彼が表に出なくなったのは、名の知れた父親のせいで息子が傷つけられる事件が起ってしまったせいでもあるんだけど、それだけが理由じゃないのよ、mamiならきっとわかるでしょう…? そして私は自分なりの答えを持って英国に帰り、貴女からの手紙に出会ったのよ。それは偶然とも言えるけど、私は天の父からの贈り物だと信じるようになったの。そして手紙を読むたび、この人なら間違いない、って確信を持った」
m:「それは身に余るお言葉です。しかしヴェロニカさん…こんな場面でナンですが…一番最後の科白ですけど、以前どこかで言うてませんでしたか…?妙に懐かしい響きだったんですが」
V:「どこかで言ったかしらね?自信はないけど、きっと言ったのね…家族と一緒の時に。私は運命論者らしいから(笑)」
m:「私の気のせいですかね。すみません、大事な話の途中なのに…」
V:「ううん、私も長いモノローグがいったいいつまで続くのか不安だったから、助かったわ」
m:「そろそろお伺い致しますが、ヴェロニカさんは何故逢いに来てくれたんですか?ホントのところを教えてください。初めてのお返事を戴いた時は『このヴェロニカって誰や…?騙してるんちゃうやろな…!?』と疑心暗鬼になるくらい驚きました。あれだけ大胆に手紙を送りつけはしても、実際には決して越えられない、見えもしない線の向うにいる方々だと思っていましたから…」
V:「mami、さっきも言ったけど、私もジョンもただの人間よ。そして今我々がこうしているのは、貴女自身が切り開いた場所に、私がいることを神が許したからなの。…って、また長くてつまらない科白を延々喋らなきゃならない気がするけど……私は時々、英国はもとより、フランスやドイツからも雑誌のインタビューに応えて欲しいというオファーを受けるわ。もと有名人、の妻、ということでね。ジョンは私に決してそれを禁止したりはしない。行きたければ行っていいよ、と言うだけよ。今の正直な気持を話してくださいと言われて、何度も 心を揺り動かされたわ。だって私には、ジョンに対して言いたいことがあるんですもの。直接言うには私もそれを聞く彼も辛すぎるから、手段が必要だった。私はそれを探していたの。だから雑誌のインタビューを一度は受けようとさえ思ったわ。でも、よく考えたら私が勝手にマスコミの前に出て行くと、悪戯にジョンの生活を掻き回すことになるのよ。しかもお金を貰ってね。静かな生活に根ざして、穏やかな暮らしをしてる夫の自由を私が売って良い筈がないわ。おまけにジョンが、心の奥に誰にも言えない悲しみや苦しみを抱えていたとしたら…?その傷があまりにも深過ぎて、本当は戻って行きたい世界を恐れているとしたら…どうなるの?私がジョンを追い詰めるの?さらに苦しめるの?……私が表に出て思いの丈を喋るというのはそういうことなのよね。曲解したがるマスコミが面白おかしく書き立てない筈がないものね。私はそれに気がついてから、ますますジョンに何も言えなくなった。以前は気軽に『ねぇ、ファンが恋しくならないの?ステージが懐かしくない?』と聞けたのに、今では腫れ物に触るような気持よ」
m:「…とうとう私が一番知りたかったお話を聞かせていただけるんですか?」
V:「ええ、お話したいわ。もうこれ以上ギャグで逃げ切れそうもないし、ずるずると対談を引き延ばすのも貴女に申し訳ないわ」
m:「いいえ、延びるのは一向に構いません。もっと事実を知りたいですし、私は何も困りませんから」
V:「でもこれは…架空対談の筈よ?」
m:「そんなことはもう忘れませんか?確かに日本には『嘘から出た誠』ということばもあります。私達を使ってこの対談をさせている人がそれを狙っているんだというのも、とうの昔から知っています。でもそんな人でもジョン・ディーコンファンで、日々オヤジを想って暮らしているんです。例え年代当てクイズの正解がたった9つしかなくて写真のウラ焼きを見破れない人であっても、オヤジに魅了され、心密かにオヤジが表舞台に出て来るのを待ってるんですから。もちろんもっと純粋なファンも大勢いらっしゃいます。皆さんがオヤジの一番近くにいるヴェロニカさんのお言葉を、今この時、固唾を飲んで待っているんです」
V:「じゃあ、続けてもいいのね?」
m:「どうか…迷わずにお聞かせ下さい」
V:「ありがとう。もしジョンがこのまま何も言わないで本当に引退してしまったら、貴女は彼を許せるかしら?」
m:「……それがオヤジの最終的な結論であるなら許したいのですが、恐らく、かつてないほど悶える事態は避けられないと思います」
V:「そう、貴女は必ず苦しむことになるわ。いつかジョンが本当に過去の人になるまで」
m:「本当に過去の人になるなんて……それだけは厭です。今まで何度も何度もそのことを考えて来ましたが、やはりどこかでオヤジがいつかは表舞台に戻って来ると無意識のうちに期待していたのは…認めなくてはなりませんね…」
V:「でも、彼が引退するっていうことは…ファンはどんなに不本意であろうと諦めなくてはならないってことよね?」
m:「…はい」
V:「mami、ジョンは間違ってないかしら…?」
m:「間違っている?」
V:「そうよ。彼はこのままでは大きな罪を犯したまま、自分だけを守る為に二度と貴女方の前に出なくなるかも知れないの。もし本当に引退するつもりなら、せめて何かを彼のファンの為に言わなきゃならない責任があるんじゃないかしらね?」
m:「はい。正直なところ私はそれを待ち続けています。きっといつかは何かを言ってくれるに違いない、一縷の望みに賭け、待つことが希望だと言い聞かせて来ました。しかし我々ファンは、オヤジの身に何が起ったのか、どうして表舞台から身を引いたのか、を語ってくれない彼を断罪しようとは思っていません。何故そんなことが出来るんですか?先ほどヴェロニカさん自身がおっしゃったように、オヤジには誰にも言うことの出来ない悲しみや苦しみがあるなら、それが理由でステージに立つことができないのであれば、そこまで傷ついたオヤジをいったい誰が責められるというのです…?」
V:「じゃあ彼は、彼自身に起こったことと同じことを、大勢のファンに、元気にまた音楽活動を再開すると信じて希望を捨てないファンに対してしてもいいの?彼は信じていた存在を永遠に失い、彼にもある筈のその衝撃を跳ね返す力を無視したまま、自分の世界に閉じ篭もっているのよ。彼だけに、どんな罪をも許される免罪符があるとでも?どんなに苦しくても彼は自分を支えてくれた、今も支えてくれようとしているファンから目を逸らしてはいけない、忘れてはならないはずよ…!」
m:「もうそれ以上言わんといてください……」


V:「mami、私も溢れる思いを誰にも言えなかった。でも言いたかったわ、誰かに、私の本当の気持を。でも出来なかった。ジョンと同じように、私も自分の本心に気付かぬ振りをして、なるようにしかならない運命に従って生きるのだと思おうとしたわ。神の許しを乞うだけの日々を送る…それすらも私が背負った人生なのだと、わかったつもりになった。でも、そんな時よ、貴女からの手紙が届いたのは。何故今頃、私の気持ちを掻き乱すの?もうやめて、私はもうこれ以上何も背負うことはできない、と一度は貴女を恨んだわ。そう、正直に言うと最悪の出逢いだったのよ。でも短いながら、貴女はジョンの状態も私の気持ちも言い当てていた。何度も何度も読み返すうちに、貴女もジョンの不在に傷つきながら、信じることだけを武器に闘っているのだと気がついたわ。いつの間にか教会でも貴女からの手紙が来るのを待ってる人達が現れた。貴女は教会でその手紙を開く人に対しても暖かい言葉を贈ってくれたのよね。何故私にその手紙を 渡して欲しいのかも、正直に書き綴ってくれたわよね?心からの愛情に触れて嬉しくならない人はいないわ。mamiという人の形は見えなくても、心に触れる言葉がそこにあるのよ。それ以上何が必要かしら。私も貴女からの手紙を心待ちにするようになり、いつしか逢いたいと思う気持を押さえられなくなったのよ。貴女と私はきっと同じ想いを抱えていると信じることができたから」
m:「……………」
V:「本当はね、ジョンはわかっているの。ファンがどれほど自分の人生を支えているのか、自分が何をするべきなのか、知っているわ。 でもまだそれを言葉に出来ないジョンもいるの。彼は今、『ありがとう』を素直に言えないわ。心の奥からありがとうと言うのが怖いのね。自分を支えてくれた人に幾度となく繰り返した言葉が、ジョンの中で引き金になるからよ。『ありがとう』に続く自分の気持ちが溢れ出すことを拒んでいるわ。その先に進んで行くことをもっとも恐れるのは、それをすることで彼の目の前から消えてしまった人の『死』を認めなくてはならないからなのよ。彼は未だ現実を受け入れたくない、受け入れれば必ず自分自身と向き合うことになる、そこから逃げているのよ。そうすることで本人はそれ以上苦しまなくて済んでいるかもしれないけど、じゃあ、ジョンを待つファンにも似たような苦しみを与えていいのかしら?ジョンが受けた事実は『死』で、ジョンのファンが受けているのは『単なる不在』だという人もいるわ。もちろんその二つは全く別のものよ。でも…身勝手よ。何年経ってもこのままでいるつもり?彼の廻りで生きてる人々の気持を無視して?ジョンなら人の想いを踏み躙って、自分だけ時折顔を出す哀しみの中に沈みかけても許されるの?……違うでしょ? もう過去の事実と現実との折り合いをつけてもいい時期だわ。肉体の死は避けられないものだと、いずれ必ずやってくるものだと、再確認して欲しい。そして、今後どうするのか、どうしたいのか、自分の言葉で語らなくてはならないわ」
m:「そうして欲しいと何度願ったかわかりません…でも裏腹に私は今…ジョンにそんな苦しみを味わって欲しくないです。いつも笑顔を見せてくれていた屈託ないオヤジは、訳のわからん服を着て、ステージでは他のメンバーと滅多に絡まんと、仏頂面で妙な踊りを見せるけれど…突然全開タンポポな頭にしたり、抜けたかと思うとまた生えたり…『いったいアンタはなんやねん…?』思うて…それでも毎日 が彼と共にあったんです。すみません……何を言ってるのか自分でもわからなくなりましたが…今も明日もずっとずっと、オヤジは私の一部なんです。彼について考える時こそが私の……」
V:「だからこそ、ジョンはそんな想いに応えなくてはならないのよ。ジョン自身の為にも」
m:「オヤジは越えられますか?もっと壊れてしまいませんか…?昔彼の父親が亡くなった時、彼はショックのあまり記憶をなくしたと聞いています。そんな過去を背負った人間が……立ち直ることができるんでしょうか?」
V:「立ち直らせたいの。mami、もし貴女の力を貸していただけるなら、私はもう迷わずにジョンの最後の難関に立ち会う覚悟は出来ているもの」
m:「こんないちファンの自分に出来る何かがあるとは思えません。それこそ荷が重過ぎます。もっと他に、私以上に理解している人が きっといると思います…どうか、もうこれ以上私に何も言わないで下さい…!」


V:「mami、こんなことを言う私を許してね。でももう何も言わないでと言われても…そうはいかないわ。ここで終わりになんか出来ないもの。それともここで一旦気を持たせつつ終わらせて連続物にしてしまう? いいえ、それも出来ないわ。15時間以上もかけて英国から飛んで来たことになっているのよ。7人の子供達が家で待っているし」
m:「…え?また増えたんですか…。いつの間に?」
V:「ひとりはオヤジだけどね」
m:「やめんかい、こんな時に」
V:「そう、その意気よ!貴女が必要なの。貴女のサイトに来てくれるファンの人達と一緒に、ジョンを穴倉から押し出してやって欲しいのよ。孤独に打ち克つ為には、同じ想いを共有できる人間が必要なのだと、ジョンに思い知らせてやって。穴倉から出た後のことは私が引き受けるわ。私の残りの人生を賭けて、ジョンを必ず立ち直らせるから……!」
m:「わかりました。出来る限りのこと…それがどんなことかさっぱりわかりませんけど、お手伝いさせていただきます」
V:「ありがとうmami。本当に来て良かったわ。じゃあ早速で申し訳ないけど、殿堂入りの授賞式に出席するよう、勧めてくださる? 活動再開に相応しい最初の一歩は輝かしいステージで、と」
m:「ではサイトの皆さんにメッセージを書いていただくことにしますね。あとでお送りしますから、ええと、住所を教えていただけますか?」
V:「その前にもう録音をやめましょうよ…住所がバレるといけないから……」

(カセットを止める音)

(了)

<番外編U・ヴェロニカの本音>
【オフレコの罠】

mamiが英国のディーコン邸の住所をメモしている。

m:「...Wimbledon......UK...と。ここにいらっしゃるんですね、オヤジもね…」
V:「いつか遊びに来てね」
m:「ありがとうございます。必ず行きます!今日は本当に長い対談になりましたね。お疲れさまでした」
V:「こちらこそ、本当にありがとう。私の言いたいこと、ちゃんとわかっていただけたんですもの、こんなに嬉しいことはないわ」
m:「つまりヴェロニカさんは…心の底からオヤジに『ええ加減、はたらけぇ!』思うてると、そういうことですね?」
V:「当然よ!…ジョンが家にいるようになってから、心休まる時がなくなってうんざりしてるの」
m:「そんなに重症なんですか?まさか、酒乱とか?暴れるとか殴るとか…?」
V:「違う違う。あの人はもともとがお喋りなの。だから機嫌のいい日は一日中喋ってる、しかも得意の物真似でよ。もう、うるさいなんてもんじゃないわ」
m:「九官鳥ですがな…(爆)いっそ、そっちで売り出すのも悪くはないような…」
V:「何でもいいけど、とにかく働きに行く気になってくれるなら文句はないわ。煽ててやってね」
m:「はぁ…。この先私はブライアンとロジャーの気持ちがよ〜くわかるようになるんでしょうね…きっと…」

(おしまい)

*Thanks to:All kids for Deacon's Family,Paul,Ringo,George,Jimmy,Brian, Roger and Forrest Gump...?
Special Thanks to:mami, Veronica &John "Broken Oyaji" Deacon and Freddie Mercury

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