:: BACK ::

父を巡る家族の噂

Written by ぼーいんぐ819さん

キャメロン:「あのね」
ロバート・マイケル・ローラ・ジョシュア・ルーク・ヴェロニカ:「なあに?」
キャメロン:「あ〜、誰か一人が答えてよ。みんなで喋ると何がなんだかわからないよ」
ロバート:「どうした?」
キャメロン:「ねぇボビー、パパはどうしていつも家にいるの?」
ロバート:「うっ…うん、パパは家で仕事をしてるから…だよ」
キャメロン:「仕事?どうして家で仕事するの?同じクラスのエリックのパパも ジェフのパパもジミーのパパもみんな朝仕事に出掛けるんだよ。僕のパパだけ家で仕事するなんて変だよ」
ロバート:「別に変じゃないよ。家で仕事をする人は世界中にいっぱいいるんだ」
キャメロン:「どんな仕事?」
ロバート:「そうだな、例えば小説を書いたり、絵を描いたり、家の設計をしたりとか、いろいろね」
キャメロン:「へぇ…。じゃその人達もみんな、家でエプロンつけてるの?パパみたいに?」
ロバート:「え…?あぁ、まあね。つけない人もいるよ。パパだって毎日エプロンしてる訳じゃないだろ」
マイケル:「…あのさぁ、チビ相手にマジになってどーすんの…?」
キャメロン:「ボビーは知らないだけさ。パパはいつだってエプロンしてるよぉ…わぁーっ(泣)」
ローラ:「ボブ、この前の事件聞いてないの?」
ロバート:「事件?」
ルーク:「水曜日の下校の時、パパが車で迎えに来たんだ」
ロバート:「へぇ、親父がねぇ。でも良かったじゃないか」
キャメロン:「ちっとも良くないよ!」
マイケル:「最後まで聞いてやれよ。親父らしくて笑えるぜ」
ロバート:「で?」
キャメロン:「車の中から僕を呼ぶんだ。"ハイ、リトル・ピッギー"って」
ジョシュア:「あのでかい声で、子豚ちゃ〜ん、か(笑)」
キャメロン:「僕恥ずかしくて死にそうだったよ。エプロンつけたままだったし」
ロバート:「何言ってんだよ、俺なんかカエル呼ばわりされてたんだぞ。つい最近までな」
ジョシュア:「…まだいいよ。間違えられるよりはね」
ローラ:「そうそう。パパは子供の名前をちゃんと覚えてないわね。いつも私に 向ってママの名前を叫ぶし、ルークなんて『こら、ボブ!…いや違う…マイク!…じゃなかった。ジョ…でなくてルーク!!そうだ、お前はルークだ!』だもの。何を叱られてるのか忘れちゃうじゃない」
ジョシュア:「ルークは家族の名前で間違えられてるからマシだよな。俺ン時はブライとかフレッドとか、ひどくなったらロイだマックだディヴだいろいろ出て来る。俺って誰?」
マイケル:「反撃すると拗ねて部屋から出て来なくなるから厄介だしな」
ジョシュア:「かと思うといきなり居なくなるし」
マイケル:「昼間は大体キッチンにいるようだけど、親父が料理するなんて今でも信じ難いな」
ルーク:「しょっちゅう怪我してるよ。ナイフ使うのが下手なんだ」
キャメロン:「でも変だよ、パパは。左指を切っても『あう…』って言いながら右手の指を舐めてた。パパ違うよ、って言っても聞こえないみたい」
マイケル:「ま、長年の習性は抜けないわな」
キャメロン:「またママに叱られてたよ」
ロバート:「そういや、いつだったかな、白いポルシェが突然売られて行った事、お前覚えてる?」
マイケル:「俺らが子供の頃だろ?何となく記憶にあるな」
ロバート:「あれは可笑しかったよ。ママに散々叱られて…」
ヴェロニカ:「ボビー、その話は忘れなさい。それにあなた達しか知らないこと よ」
ルーク:「ポルシェがどうかしたの?」
キャメロン:「ポルシェってあのかっこいい車だよね?」
ローラ:「家にあったのよ、ほんの少しの間だけど」
ルーク:「えーっ!? 誰が乗ってたの?ママ?」
ヴェロニカ:「まさか!ママは乗らないわよ、あんな車」
キャメロン:「じゃあ、ボビー?」
ロバート:「違うよ、俺がまだルークくらいの頃のことだ」
ルーク:「パパが乗ってたの!?ポルシェにぃ?」
キャメロン:「誰かが捨てたのを拾ったの?」
マイケル:「そりゃいいや…(笑)。でも誰も捨てないよ、高い車だしな」
ルーク:「パパが買ったの!?」
マイケル:「そうさ」
ローラ:「まぁ、若気の至り…ってヤツだったのかな」
ヴェロニカ:「あら生意気ね。でも、それもあったのかもね…とにかく昔の事よ。この話はおしまい」
ルーク:「でもどうしてパパがポルシェなんか買えたの?」
キャメロン:「ポルシェってお金持ちが買う車なんでしょ?」
ローラ:「別にうちは貧乏じゃないわよ。ヴォルヴォだって安い車じゃないもの」
ルーク:「だってパパいつも同じ服着てるよ。お金持ちなら新しい服着るだろ」
キャメロン:「うん。エプロンも大好きだよね、ママのお古の」
ロバート:「昔から親父って着る物には頓着なしだからな」
ジョシュア:「俺、ボブやマイクのお下がりばっかだったよ。たまに親父が買ってくれるのは毎回ジャージだし。どうしてあれでクイーンをやってられたのか、不思議だね」
マイケル:「ロジャーに初めて会った時、全てがカッコ良くて俺びっくりしたもんな」
ロバート:「比べる相手が悪すぎるよ。ロジャーは完璧なロックンローラーだぜ」
ヴェロニカ:「あんた達…言いたい放題ね。パパだって昔はステキだったのよ。今もそこそこ…」
ローラ:「確かに昔はね。同級生の間でも人気あったわよ」
ヴェロニカ:「あら、そうだったの?初耳ね」
ローラ:「私が生まれる前の、髪の長い時代に限るけど…あれは詐欺ね」
マイケル:「言えてる(笑) あの美青年でございって顔は正しい商業路線ではあるけどな」
ローラ:「『家にこんなステキなパパが居るなんて羨ましいわ!』とか言われたけど、家の中でクイーンやってる訳じゃないし…。実態がアレじゃあ、騙されてる女の子達が気の毒だわ」
ヴェロニカ:「ローラ、言い過ぎよ。誰にだっていいところも悪いところもあるものよ。そりゃパパは見た目と中身が全然違うし、着替えるのは面倒臭がるし、出掛けるのは大嫌いだし、調子に乗ってはバカなオチをつけるし、14日間のツアー用に15枚トランクスを持たせても洗濯しなきゃいけないのはたった6枚だったり、落ちつきを売り物にしてる割には信じられないような怪我もいろいろやったわよ。でもね、ミュージシャンは大変なのよ」
ジョシュア:「ママ、全然フォローになってないよ」
マイケル:「ミュージシャンだった、だろ?」
キャメロン:「ミュージシャン…なの?パパが…?」
マイケル:「だからぁ、だった、なの!」
ルーク:「すっごーい!!かっこいいや!」
キャメロン:「うん、かっこいい!」
マイケル:「そうだよ、パパは凄かったんだ、昔はね。有名なベースプレイヤー だったんだよ、昔はね」
ロバート:「やけに拘るなぁ」
マイケル:「なぁ俺、イヤな事思い出しちゃったよ」
ロバート:「なに?」
マイケル:「親父がまだワールドツアーに出てる頃にさ、俺達も時々お袋に連れられて合流したよな」
ロバート:「ああ、何度も外国へ行ったっけな」
マイケル:「親父と会えるのは嬉しかったけど、ホテルの中って退屈だったんだ」
ロバート:「そうかぁ?お前いつも結構楽しそうに走り回って、ツアー・クルーの部屋とかにちゃっかり入り込んでお菓子貰ったりしてたぞ」
マイケル:「…まぁな。ビール飲ませてくれた人もいたよな。髭生えた強面」
ロバート:「今は亡きポールだろ?俺もシャンパン飲まされた」
マイケル:「ああ。変な人だったけど、なかなか面白かったよ。そのポールといつも一緒に居たオッサンでさぁ、よく酔っ払ってた人がいたろ?」
ロバート:「俺あんまりよく覚えてないんだよな…」
マイケル:「いたんだよ、とにかく。でっかいヤツでさ。そいつが俺をひょいと抱き上げては決まって言う科白があった」
ロバート:「なんだよ?」
マイケル:「"いいね、いいね、どうでもいいよ、なんでもいいよ、俺には関係ないよ"のジョンの子だろう?って歌うんだよな」
ローラ:「なによそれ?」
マイケル:「親父ってあんまりクイーンクイーンしてなかったろ?多分アレはすっげえ皮肉だったんじゃねえのかな」
ロバート:「ひでぇな。幾らなんでも、子供に言う事じゃないよな」
ジョシュア:「ふ〜ん。でもなんだかさー、そう言いたくなる気持も少しわかる よ」
マイケル:「どして?」
ジョシュア:「だってさ、仮にも親父ってロックミュージシャンだろ?」
マイケル:「まあな。ミュージシャンだった、よな」
ロバート:「しつこいなお前も」
ジョシュア:「そういう人種に見えるか?」
ロバート:「あ、いや…見えないかもな」
ジョシュア:「ぱっと見、カッコ良いか?」
マイケル:「…そうは思わんな」
ロバート:「俺達が考えるスターってのとは大分違うな、確かに」
ローラ:「そんなに悪かないわよ。ただ物足りないだけでしょ?」
ジョシュア:「なんだかんだローラは親父に甘いよな〜」
マイケル:「近寄ろうとしてよけられないのはローラだけじゃないの?」
ローラ:「よけられてますっ!! パパは向ってくる人の気配を察すると誰でも交わすじゃない」
ヴェロニカ:「ほんとうに悪い癖よね…」
マイケル:「まったく…。子供の頃は嫌われてるのかと思ってたよ」
ヴェロニカ:「特にツアーから帰って来た時がひどかったのよ。久し振りに会った家族なのに、みんなをよけて泣かせてたわ。アレはパパの病気みたいなものなのに…可哀想な子供達」
ローラ:「私がボーイフレンドを連れて来た時なんか、はっきり逃げたわよ」
ロバート:「なんだい、ずいぶん古臭いよな親父も」
ローラ:「そうよ、自分は出来ちゃった結婚してるくせによ」
マイケル:「でも、それってさぁ、背の高いギター・マニアの、フレッド・テイ ラーなんて名前のヤツを連れて来るお前の方がどうかと思うけどな」
ジョシュア:「よりによって昔の同僚が束になってる娘の恋人なんて、逃げたくもなるよ」
ローラ:「クイーンのメンバーと同じ名前なんて、掃いて捨てるほどいるじゃないの」
ロバート:「俺なんかブライアンとこのジミーとツェッペリンやるって噂があったんだぞ」
マイケル:「ふざけた名前だよな。でも、長男の割りには跡を継ぐ気がなかったのは幸いだったな」
ロバート:「うるさいよ。悪かったな、音痴で」
ルーク:「パパも歌は上手じゃないよ。ボビーはパパに似たんだね」
ローラ:「パパは歌が下手でも、音楽家の才能だけはあったのよ、ボブと違って ね」
ロバート:「放っといてくれよ。俺ミュージシャンになりたいと思ったことないんだから」
マイケル:「あのジミーってさ、父親のブライアン以上だって噂だぜ」
ロバート:「そんなにギターが上手いのか!?」
マイケル:「…違うよ。優柔不断のくせに、やたら頑固なんだとさ」
ロバート:「そっちの才能かぁ…なるほどね。キャメロンのメカ好きは悪くない遺伝だ」
キャメロン:「ねぇ、僕も大きくなったらパパのバイクに乗りたいな」
マイケル:「パパのなんてケチなこと言うなよ。もっと大きいバイクに乗ろうぜ」
ジョシュア:「親父はなんであんな小さいのに乗ってるんだろ?」
ルーク:「あのバイクって大きくないの?」
マイケル:「あれはそんなに大きくないよ」
ルーク:「マイクのは?」
マイケル:「俺のはカワサキ。日本製でこっちはオーバー・イレヴンのモンスターなんだぞ」
キャメロン:「パパは大きいバイクに乗れないの?」
マイケル:「乗れない訳じゃないよ。だけど俺のバイクにはかなりビビッて乗ってたな。自分のバイクでないとUターン出来ないようだし」
ロバート:「Uターンできなかったら、ただ真っ直ぐ走るのか…?どうやって帰ってくるんだ?」
マイケル:「それジョークかよ…?ボブのジョークって凍えるほど寒いよな。別に曲がれないんだとは言ってないだろ?取り回しさえ出来れば押し回しして向きを変えりゃいいのさ。帰って来られるよ、カッコ悪いけど」
ロバート:「どうして親父はUターンくらい出来ないんだよ?」
マイケル:「わかってないなぁ。バイクってのは曲がる時にバンクするんだよ、曲がる方向に体を倒す」
ロバート:「それくらいは知ってるよ」
マイケル:「Uターンはそれよりもっとバンクが深いから、転ばないように廻りながら軸足を一度路面に着けるんだ。これが結構難しい、特に右回りがね。コケたら即修理が待ってるし」
ジョシュア:「ミラーは割れる、ステップは折れる、ハンドルも歪む、だろ?」
マイケル:「そう。タンクの破損もあり得るぞ。大事なことはバイクと一緒に転ばないことだ。怪我したくなければ倒れる前にバイクを蹴って飛ぶ。しがみ付いたら骨の2本や3本、あっという間に折れるからな」
ルーク:「怖いね」
マイケル:「そうさ。怖いんだぞ、バイクは。スピードも出るし、スリルも車の比じゃないからな」
ローラ:「でもいいじゃないの。あの歳でバリバリの現役ライダーなんて悪くないわね」
ヴェロニカ:「あんまり脅さないでよ。聞いてるだけで冷や冷やするわ。ああジョン、大丈夫かしら…」
マイケル:「あ、そんなに心配は要らないよ。親父が速いのは直線だけだから」
ジョシュア:「エンジンの押し掛けも苦手みたいだし、スターター・スイッチで掛からない時はすぐ諦めるし」
ロバート:「そのうち解体してバラバラにするんじゃないの?」
ヴェロニカ:「そう、実はそれが一番心配なのよ。うちのガレージはパパのガラクタだらけなんだから」
ローラ:「ねぇ、ママはどうしてそんなパパと結婚したの?」
ヴェロニカ:「何度も言ったでしょ。神様が…」
ローラ:「ママ、現実的に答えて欲しいの。結びつけてくれたのは確かに神様かもしれないけど、ママはパパとどうやって出逢って、どんな恋に陥ちたの か、それが知りたいのよ」
ジョシュア:「俺も聞きたいな、それ」
ヴェロニカ:「アナタ方が思ってるほどドラマティックじゃないわよ」
ローラ:「照れないで。ねぇねぇ、パパの何処に惹かれたの?」
ヴェロニカ:「そういう事って、自分の子供たちの前では言い難いものなのよ」
ローラ:「私ももう大人よ。同じ大人の女性としてちゃんと答えて」
ヴェロニカ:「困ったわねぇ……」
マイケル:「あれれ、もったいぶってるぜ」
ローラ:「…んもう、マイクは茶々入れないで!」
ヴェロニカ:「わかったわ。教えてあげる。私はジョンに出逢った瞬間から予感があったの」
ロバート:「一目惚れ、ってやつ?」
ヴェロニカ:「そうよ。そして逢うたびにこの人は間違いない、って確信を持っ た」
ローラ:「運命の男性ってことに?」
ヴェロニカ:「そう、それもあるけど、ジョンの素晴らしい才能によ」
ジョシュア:「音楽の才能や将来スターになるってこと…?」
ヴェロニカ:「あらやだ、何を言ってるの?パパのあの素晴らしい経済観念、に決まってるじゃない」
ジョシュア:「…………」
ローラ:「経済観念…?それが恋の話なの?」
ヴェロニカ:「そうよ。本当にステキだった。何日同じ服を着ていても輝いていたわ。デートにお金を掛けないし、いつも堅実で食事に行っても割り勘を通したし、お誕生日には道端のお花をくれたわ。電話代が勿体ないから、交換日記してたのよ。デートは公園や銀行のロビーとかで健康的に」
マイケル:「…ママ、よくそんな親父を張り倒さなかったね…」
ヴェロニカ:「どうしてそんなことをするの?」
マイケル:「だって若い男女のデートだろ?もっと華やかで、楽しい場所に行きたくならなかったのかい?まるで年寄りじゃないか」
ヴェロニカ:「なんてことを言うの?お年寄りのデートはもっと豪華絢爛で贅沢 よ。一緒にしないで頂戴」
ローラ:「夢も希望もないじゃない」
ヴェロニカ:「贅沢なんかしなくても、2人でいるだけで楽しかったんだからいいの」
マイケル:「貧乏学生と純情女性の恋物語ってわけだ」
ローラ:「でもね、パパの若い頃って結構モテたんじゃない?ライバルはいなかった?」
ヴェロニカ:「バンドマンだからファンを名乗る子は何人かいたけど、ジョンは女の子にちょっかいを出すような人じゃなかったわね。ずっと勉強も続けてたし、忙しかったのよ」
ロバート:「その経済観念旺盛で地道で堅実な人が、クイーンで変わって行った時は不安じゃなかったのかい?」
ヴェロニカ:「例え私の知らないジョンがいても、全ては神様が知っていらっしゃるから、何も不安はなかったのよ。当時はジョンもクイーンのことをいろいろ話してくれたのよ。今は無口だけど」
ローラ:「派手な衣裳を身に纏ってお化粧してた時は?戸惑わなかったの?」
ヴェロニカ:「ジョンは仕事は仕事と割り切ってたもの。当時はお金になるならって、いろんなことやってたわ」
ルーク:「パパが化粧してたの…?」
キャメロン:「えーっ?パパがぁ?」
ルーク:「ヤダな、僕。だってパパが化粧したってローラやママみたいにキレイ じゃないだろう?」
マイケル:「あぁ、今の親父ならな。俺も見たかないよ、きっと怖いぞ〜」
ヴェロニカ:「もうそんな事する訳ないでしょう?茶化してキッズを煽るのはやめなさい!でも昔のパパは綺麗だったのよ、上品な貴族みたいにね」
マイケル:「うん、俺も若い頃の親父は最高にカッコ良かったと思うよ。しかもあのサウンド…イカしてる」
ローラ:「すっかり変わっちゃったけど、でもパパは今もまあまあね。よそのオジさんに比べたらクールだし」
ルーク:「ねぇ、パパのCDやビデオないの?僕も観たい」
ヴェロニカ:「今度ね。も少し大人になってから」
キャメロン:「え〜、いやだよ。今すぐ見せてよ」
ヴェロニカ:「パパはまだ観て欲しくないみたいよ」
ルーク:「どうしてさぁ?」
ヴェロニカ:「さぁね。どうしてかしらね」
ロバート:「親父は俺達4人に出来なかったことを、多分チビ達にしてやりたいんだろうな」
ジョシュア:「出来なかったこと…?」
ロバート:「いつも側にいてやることさ。家を空けてばかりのスターじゃない、普通の父親したいんだよ」
ローラ:「キッズは幸せよね。小さい頃の私達がパパにいて欲しい時も、電話で声しか聞けなかったわね。遠い外国にいるパパを何度恨んだかわからない」
ロバート:「病気の時なんか、ひどく恋しかったもんな」
ヴェロニカ:「ナイショだけど、ジョンもよく電話口で泣いてたのよ。子供たちに逢いたい…って。だから今はスターなんかじゃない、一人の父親として他の子供たちに出来なかったことをしてるのよ。精一杯子供の為に生きてみたいのよ、ジョン自身がそうされたかったから、余計にね」
マイケル:「お前達、パパが好きか?」
キャメロン:「だーい好きっ!エプロンしててもいいよ、パパだから」
ルーク:「ちょっと変だけど、面白いし優しいからね。僕も愛してる」
ロバート:「それでいいんだ」
ヴェロニカ:「駄目よ。それだけじゃ駄目だわ」
ローラ:「どうして?」
ヴェロニカ:「幾らなんでも、もう少し外に出てもらわなくちゃね。昔のようにツアーに行けとは言わないけど、まだ閉じ篭もる年齢じゃないわ。それにたまには昔のように、久し振りに逢う感動も味わいたいの」
マイケル:「そうだよな。親父は良いけど、毎日親父がいたんじゃ、ママは堪ったもんじゃないよね」
ヴェロニカ:「人間には変化も必要よ。また何かに夢中になってるジョンが見たいし」
ジョシュア:「親父またミュージシャンやらないのかな?」
ヴェロニカ:「どうかしらね」
マイケル:「腕は鈍ってないし、あんだけのビッグネームなんだから、やる気になればまたすぐ引く手数多だろうな。後は当人の気持ひとつってことかな」
ロバート:「キッズもいつまでも子供じゃないし、もうひと花咲かせて欲しいね」
マイケル:「案外、すぐにでもやる気になるかもよ」
ローラ:「パパはそんなことをマイクに言ったの?」
マイケル:「いや話したわけじゃないけど、この前突然俺の部屋に来て、ジャムったりしたからさ」
キャメロン:「いいなぁ、マイク」
ルーク:「僕もパパがベース弾いてるところを見たいよ」
ロバート:「もう少しだけ待ってやれよ、親父がいいというまで」
キャメロン:「僕達には見せたくないのかなぁ?」
ロバート:「見せたくないんじゃなくて、パパとしてだけ見て欲しいんだよ、お前達が可愛いから」
マイケル:「そうだ。大人になったらもっと親父って人がわかるようになる。それからでも遅くはないよ」
ルーク:「なんだかパパって凄いんだね。起きてきたら、いっぱい話をしてもらおうよ」
ヴェロニカ:「可愛いのはキッズだけじゃないわ。6人全員が大事な宝物なんだから」
ローラ:「違うわよママ。7人全員でしょ?ママがいなきゃ私達絶対グレてたんだからね(笑)」
キャメロン:「僕達、パパの子供で良かった。よーし、起こして遊んでもらおうっと!」
マイケル:「おっと、優しくな…殺すなよ……?」
                   
(了)

*番外編* 【音もなく登場】'So what?'

:: BACK ::