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太陽に奏でろ!〜オープニングスペシャル


ある刑事の独白〜AS IT BEGAN

「調子いいと思うかい?」
「だんだん棺桶に近づいてるって気分だね」

クイーンズロックのとある路上で、シケた会話を交わしている二人の青年が
いたとしよう。
彼らは音楽バンドを作ろうと田舎から上京したんだが、右往左往しているところに
まんまとつけこまれたんだな。気が付くと「お笑い」なんていうコミックバンドに
なっていて、全財産は街で有名な詐欺師グループ・ポリデントに取り上げられて
しまったって訳。よくある話さ。

で、打倒詐欺師の執念に燃えながらも途方に暮れる二人の前に姿を現わしたのが、
僕の相棒のブランデー刑事だ。
うちの署ではニックネームで相手を呼ぶのが決まりでね。なぜそんな名前かって?
そりゃあ、いつだってボトル片手に現われるからさ。
若い頃はまだ大人しく、シャンペン小僧とか呼ばれてたらしいけど。

「何をやってるんだい! そんなところで悶々してたって無駄だよ、行動を
おこさなくちゃ。君たちのコンビネーションを生かすんだ! 刑事になって
その凶悪な詐欺師をとっつかまえてやりなよ!」

そんなことを言ってヘリコプターからマシンガンを担いで華々しく登場した
…らしい。サングラスに皮ジャン、手にはいつものボトルで。
こういう派手なのって僕は困るんだけど、彼らは非常に感動したみたいだ。
こうして彼らは刑事としてうちの署で働くことになった。
人手不足だったから、ちょうど良かったよ。

一人はとっても綺麗な金髪で女の子みたいだから、
オスカル」にしようって言ってたんだけど、本人が嫌がってね…
「俺はタイガーがいい!」って
トラ皮のパンツなんか履くもんだから、そうなってしまった。

するともう一人が黙ってなくて、
「じゃあ僕はドラゴンでいいからね」なんて
聞かれないうちから言い出して、本人以外は誰も納得してないけど、とりあえず
そう呼ぶことになったんだ。気難しいところがありそうだからね。
ぼーっと突っ立ってる姿なんか、ペンギンに見えなくもないけど。

…えっ、僕?あまり言いたくないけど…ピーナッツさ。
理由は聞かないで欲しいな。…好きなんだからいいじゃないか。
張り込みするとき、手軽に栄養補給できて便利だよ。
飲むときにおつまみを食べない誰かさんがいつもくれるし。

こういうメンバーがクイーンズロックの街を犯罪から守っていってたんだが、
刑事には付き物の「殉職」ってのがうちでもあったんだ…いきなりだけど。

死んだのは、実は僕。

「一番安らかな顔で逝きそうだから」って理由ですぐに殺されてしまった。
その話もあるけど…今はいいよね、あんまりクサくって涙がでるから。

でもそれじゃあシリーズが続かないだろ?なんといっても、僕が陰の主役なんだから。
新たな刑事を加えて、ついでにイメージチェンジしようってことになったんだ。

物語はここから始まるのさ…。

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新刑事出現・その名は・・・

最愛のピーナッツ刑事を失って以来、酒浸りのすさんだ生活を送るブランデー刑事。

「なあブランデー、ブランデーとウォッカのちゃんぽんは体に悪いよ。
僕の処方した胃薬でも飲んだほうが…」
「ほっといてくれドラゴン!お前は自分の髪型の心配でもしてればいいんだ!」

ドラゴン刑事に必要以上に当たり散らすブランデーのもとに、性格に似合わぬ
プリティーな顔を紅潮させたオスカル刑事が飛び込んできた。

「ブランデー、今日新しい刑事が来るんだ。それが実はさ…」
『新しい刑事』と聞いた時点でブランデーの怒りが頂点に達した。
「そんな話ききたくない!お前ら、もうピーナッツのことを忘れたっていうのか!?
そんなの、あいつが…あいつが可哀相じゃないかぁぁぁ!!」
ブランデーはデカ部屋を飛びだし、ピーナッツとの思い出の波止場へと向かう。

『仕方ない、僕達も行くか…。途中から頼むよ、ドラム』
『OK、任せとけって。泣きのメロディ期待してるぜ』
(おもむろに始まる BGM:WHO WANTS TO LIVE FOREVER)

かなたの水平線を見つめ、手にした酒をあおるブランデー刑事。夕日が沈んでゆく。
『駄目だよブランデー。おつまみもちゃんと食べなきゃ。ほら、ピーナッツ』
彼の優しい言葉と笑顔が脳裏に浮かぶ。
「いつも自分はおつまみで我慢して…ご免よ、一緒に飲みたかっただろうに…
なぜ僕をおいて逝ってしまったんだよぉ、ピーナッツぅぅぅ…!」

(ここで中間のギターソロ&ドラム)

再び酒をぐっと飲むブランデーの隣から、急に声がした。
「はい、おつまみ」
横から現れた手には、ピーナッツが。はっと振り向いた彼の目に映ったのは、
夢にまで見たあの笑顔。
「き、君は…ピーナッツ!い、生きていたのかい!?」
思わず酒ビンを放り投げ、目の前の男をがばっと抱きしめるブランデー。

(♪〜and we can love forever〜)

彼は静かにブランデーの耳元でこう囁いた。
「ブランデー刑事ですね。兄がよく貴方の話をしてくれましたよ。
…僕は彼の双子の弟で、今度から同じ分署で働くことになりました」

「そうなんだよブランデー。彼はそのためにアメリカから帰ってきたんだ」
「だから俺が教えてやろうって言ってんのにさあ」
演奏が済んだドラゴンとオスカルも顔を出した。

かくして、アメリカ帰りのピーナッツの双子の刑事は、
彼より少々「バタくさい」風貌だということで、
皆から親しみをこめて「バタピー刑事」と呼ばれることになった。

「よし、僕もブランデーとグラサンをやめて生まれ変わるぞ。
これからはこのつぶらな瞳とキュートな前歯、整った口髭で勝負だ!」

そして「ブランデー刑事」は「ドンチャック刑事」に改名し、バタピー刑事と共に
今日も都会にはびこる悪と闘うのだった。
頑張れドンチャック、負けるなバタピー!
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ピーナッツの贈り物

「あのドンチャック刑事、ちょっといいですか?」
「やあ、ピーナッ……いや、バタピー刑事、おはよう。今日もいい天気だね」
「昨日、兄の部屋を掃除していたら、あなた宛の手紙が出てきたんです」
「え……ぼ、僕宛の?」

ドンチャック刑事は、もう泣かないと決めていたのだが、思わず目もとを潤ませる。
「それと、こんな物も机の引き出しから出てきました」
バタピー刑事は紙袋をドンチャック刑事に差し出した。
わずかに震えながら受け取るドンチャック刑事。
ドンチャック刑事はバタピー刑事に背を向け、ブラインドの下りた窓に向いた。
「バタピー刑事、すまないが、一人にしてくれないか」
了解したというように、静かに微笑んでバタピー刑事は部屋を後にする。

――手紙の内容――

『ブランデー刑事、君がこの手紙を読んでいるということは、僕はもうこの世に
いないということだね。僕は、君たちに出会えてとても幸せだったよ。とくに、
ブランデー、君の捜査を手伝ってる時が、僕にとっては一番幸せな時間だったよ。
ありがとうブランデー。もう僕は君にピーナッツを勧めることもできない……
どうか、飲み過ぎにはくれぐれも注意してね。それから、これは、僕に何かあった
ときのためにと思って、一人でこつこつ作ったんだ。僕の形見だと思って、
いつも身につけておいてくれ。きっと君を守ってくれるよ
――ピーナッツ刑事こと、ジョンより』

既に、ドンチャックの顔は涙でぐちゅぐちゅだ。彼は袋の中身を確かめる。
「こ、これは……! ぴ、ピーナッツ、君はこんなにも僕のことを思っていて
くれたんだね〜!」
ドンチャック刑事は袋に入っていた物をギュッと胸に抱きしめて号泣した。

「お? 見てみろよドラゴン、ブランデー改めドンチャック刑事がまた面白い
もんつけてるぞ」
オスカルがドラゴンの肩を叩いた。
「ドンチャック、何だいそれは? ずいぶん君には不似合いなものだね。
最近までブランデーのボトルを振り回していた君らしくない。僕としては
そのヒゲもどうかと思うんだが……」

「ドラゴン、もう過去のことを言うのはよしておくれ。僕は過ぎたことを
いつまでも考えるなんて趣味じゃないんだよ。きっと、ピーナッツも昔の僕より
今の僕の方がいいと言ってくれるに違いない」
「いったい、何があったんだい?」
「さぁね〜」
オスカルが机に脚を投げ出し肩をすくめる。
少し離れた場所で、バタピー刑事が書類を整理しながら微笑んでいる。

「僕は今日からこの路線でいくんだ! 子供にも、老人にも、勿論ご婦人方にも
優しい男になるんだ。みんなを愛する正しい刑事になると誓ったんだ」

言いながら、ドンチャック刑事は窓際のチューリップに水をあげている。
その鉢には「ピーナッツ」とマジックで大きく書かれている。
そしてドンチャック刑事の背中には、エンジェルの翼型のかわいらしいリュックが
揺れている。

「で、生まれ変わるのはいいけどさあ……なんで俺達まで名前変えなきゃならない訳?」
「何言ってるんだよ。「一人は皆のために、皆は一人のために」が僕らのモットーだろ?
ささ、僕が決めてあげるから」
「!! え〜っ、何だよそれぇぇ!」
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登場人物紹介
Roger

キューピー刑事:囮捜査専門。追跡、尾行も得意。

このニックネームが気にいらないらしく、未だにトラ柄のズボンを履いて反抗している。
「ドラゴンがいい」と常々言っているファイアー刑事といい勝負である。
名前を巡る論争でファイアー刑事とケンカしたことは、署内では「竜虎の闘い」として
伝説化している。しかし、ドンチャックに改名し、「かわいい路線」を目指す
ブランデー刑事に「君はキューピーの方がいい」と押し通されてしまう。
自分ではわざと「QP」と表記し「クイーンズロック一のプレイボーイ」の略だと
思い込もうとしている。
時々睨みをきかせて考え込んでいる顔をするので、「しかめつらのキューピー」と
署内で恐れられている。しかし、彼の悩殺スマイル&ウインクで女性をメロメロに
できるという特技も持っている。
ストレスが絶頂期に達すると、ドラムを打ちならす。
そして、蹴飛ばして壊してしまい、毎回給料がその修理に消える。
署には内緒で、密かにパブ経営の計画を立てている。
スピード違反を取り締まる度にたびたび派手なカーチェイスを繰り広げ、
自宅謹慎もしばしば。

Brian

ファイアー刑事:事情聴取・取り調べの鬼

このニックネーム、本人は「ハードでぴったりだ」と喜んでいるのだが、
「火事(fire)に遭って以来、髪型が変わらなくなったから」という真の理由が
あることを知らないらしい。
通称「落としのファイアー」。物をよく落とすからではない。
彼の理屈混じり、能書きまじりの事情聴取&取り調べには容疑者もうんざりするらしい。
しばしば、それが功を奏す場合がある。
一見キューピー刑事と仲がよくなさそうだが、実はけっこうお互い意地っ張りなだけで、
端から見ればボケとツッコミの関係でうまくやっている。
番茶にするか煎茶にするかで30分位悩み、お茶くみ係のメアリーを困らせている。
健康管理にうるさく、たくさんの処方箋を持ち歩いている。何かやっかいなことがあると、
トイレで胃薬を飲む。
父から譲りうけ、自分でバージョンアップさせた手製のマシンガン仕込みのギターが宝物。

ピーナッツ刑事:根気のいる張り込みのプロ。ピーナッツ片手にねばり強く待つ男。

メカに強い。射撃の腕も立つ。署内で一番落ち着いていた人物。
物静かで口数が少ない分、謎の部分も多い。
いつも悟りきったような顔をして、にっこり微笑んでいるので
「仏のピーナッツ」としてある者からは尊ばれ、ある者からは恐れられていた。
ピーナッツは好きでよく食べていたが、投げつけられるとひどくショックを受ける
という弱点がある。
署内バンドの演奏会などでたまにベースを担当。ファッションはいたって地味。
殉職してからも草葉の陰からブランデー=ドンチャックを見守っている。

batapi

バタピー刑事:ピーナッツ刑事の双子の弟。張り込みのプロ

殉職した兄に替わり、ブランデーのいる署に配属される。
容姿、服のセンスが兄とうり二つだが、アメリカ帰りのため、いきなり
全身エメラルド色で統一したり前髪にパーマを当ててみたりと少々バタくさいので
このニックネームがついた。兄とともに謎が多い。性格は兄より弱いらしい。
詩を書くという、情緒豊かな一面もある。内容はコテコテのラブソングが多い。
以前は田舎で刑事をしながらも、時々実家のピーナッツ栽培も手伝い、
収穫したピーナッツを兄に送っていた。すでに妻子もち。子だくさん。
酒を飲むと机に潜りたがる傾向がある。
兄からブランデー/ドンチャックの話をよく聞かされて、彼についてはとても
興味をもっている。道を誤って、間違った方向へ行きかけるドンチャック刑事を
正しい方向へ導こうと影で努めている。

Freddie

ブランデー/ドンチャック刑事:一応司令塔

……しかし今では機能不能。ほとんどムードメーカー、時々電話係。
本来、一番署の中心にいて、常に他の刑事の動向を見守る立場にあるのだが、
机の前にじっと坐っているのが嫌いで、電話が鳴るまで待っているのが苦痛らしい。
個人的に、ピーナッツ刑事の許にロールスロイスで乗り付けて差し入れするのが
好きらしかったが、その派手な登場ぶりを犯人に気づかれて、目の前で彼を失うという
悲劇に見舞われた。が、バタピー刑事の唐突な登場により新たに生きがいを見つけ、
「すべての人に優しい刑事」を目指すためイメージチェンジを図る。
ファイアー刑事の取り調べに参加する際は、場を盛り上げるために
BGM代わりに歌をうたう。選曲ミスで場をノリノリにしてしまい、
容疑者を楽しませてしまうことがある。気を良くしてのりまっくてしまった容疑者が
つい自白してしまう場合もあるので、ファイアー刑事も一概に邪魔だとは言えず、
一緒にギターを弾いて場を盛り上げるのに一躍かっている。
キューピー刑事と尾行のため街に出かけると、途中でショッピングの虫が騒ぎ出してしまい、
すぐにはぐれて迷子になってしまう。
背中の「エンジェルリュック」はピーナッツ刑事の形見だが、
その作成者同様謎が多いリュックである。
その他、年中花を咲かせているチューリップに「ピーナッツ」と名づけて
大事に育てるのが日課である。
亡き親友の双子の弟、バタピー刑事が気になって仕方が無いこのごろだ。

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